IDPFではこうした声を受け、EPUBにリッチメディア/国際化/アクセシビリティ仕様に対応すべく「EPUB 2.1」策定を進めている。6日(米国時間)時点でDraft 0.8が発行されており、そこで指摘されている現行のEPUB 2.0.1ならび電子出版における問題点は主に下記の通りだ。

  • 標準の動画再生方式が定められておらず、インタラクティブコンテンツ(例えばクイズやクロスワードパズルなど)の埋め込みが行えない

  • 中国や日本など、欧米諸国以外での言語サポートの拡張。例えば、日本では縦書きサポートなどが1つの問題になっている

  • 雑誌出版の世界で用いられるXMLメタデータ記述標準「PRISM」(Publishing Requirements for Industry Standard Metadata)をサポートし、そのシステムをEPUBで取り込む。ONIXやRDFも同様

  • 複数のディスプレイやデバイス表示を想定したページレイアウトのサポート

  • アノテーション(注釈)サポート

  • 数式サポート(MathMLなど)

  • 辞書や索引などのシステム

  • アクセシビリティのサポート(DAISYなどの音声書籍フォーマットとの連携)

以上からわかるように、EPUB 2.1では現状の記述力不足を補うとともに、補完関係にある他の電子出版標準とのさらなる連携が示唆されている。

DRMのサポート

またもう1つの課題として、DRMのサポートが挙げられる。Apple iPadはEPUBを標準方式として採用しているが、その配信にあたってDRMは独自方式の「FairPlay」を利用している。これにより、同社の提供するコンテンツはiBooks以外のアプリでは閲覧できない。IDPFではDRMの標準化を進めているものの、この作業自体はEPUB 2.1とは別のワーキンググループ(WG)で行われているという。

このように、EPUB 2.1は拡張としては非常に大きなものとなるが、IDPFの目標としてなるべく早くマーケットへの浸透を図り、既存の互換性を維持するためにEPUB "2.1"というバージョン番号を選んだという。だが一方で、最終的に「EPUB 3.0」として標準化が行われる可能性もあるとしている。

前述のリッチコンテンツをはじめ、国際化/アクセシビリティ仕様にも興味を持っている事業者や出版社は潜在的に多いとみられ、EPUBもまたより現実に即した形で進化を遂げようとしている。