Adobe Creative Suite 4の真髄は、クロスメディアパブリッシングにあり。そう言われても、実際の事例を見てみなければ実感が湧かないという読者も多いだろう。そこで来日したAdobe SystemsのInDesign担当シニアプロダクトマネージャー、マイケル・ニネス(Michael Ninnes)氏に「Adobe Creative Suite 4を使用したクロスメディアパブリッシング」の事例について伺った。
印刷マーケットからデジタル配信への適応
マイケル・ニネス(Michael Ninnes) |
--クリエイティブ市場は、これまでと違うアプローチで「デザイン」を捉え直さなければならない時期に来ているように思われます。クリエイティブ市場の現状とはどんな状況にあると考察されていますか?
マイケル・ニネス(以下、マイケル) これまでアドビでは、印刷に向けたツールを中心に開発してきました。しかし現在は、さまざまなメディアやデバイス、配信先を意識してツールを利用して欲しいと考えています。
たとえば、私自身がお客様と話すときも以前に比べて製品に特化した話をする機会は少なくなっています。Adobe InDesignやAdobe Illustratorをどう使うかだけではなく、実際にお客様が直面している課題を解決する方法をリサーチすることが増えているんです。
広告の手段も、今までの印刷マーケットからオンラインのデジタル配信へと広告の手段が変わりつつあります。その中で経営者の方々はアプリケーションの導入だけでなく新メディアへのトレーニングにもコストと時間を取られているのです。メディアが多様化するのに合わせて、今までナレッジを持っていた人を半分解雇してフラッシュデベロッパーを雇うか、それともレイアウトやデザインの知識を持った人を他の目的で活用できないか。経営者の方々は難しい問題に直面しています。
メディアの多様化--海外の事例より
--確かに、メディアの多様化はデザイン業界全般に大きな影響を与えています。日本では、1つのドキュメントを他のメディアに活用する例が多くありません。
マイケル では、米国内における例をいくつか取り上げて紹介しましょう。
まずは、「the knot」と呼ばれるWebサイトです。「the knot」は結婚情報サイトとして始まり、現在では一つのカップルが家族を作る時間に合わせた複数の情報サイトを運営しています。経営母体は90年代前後に台頭してきた出版や印刷とは無縁の企業でしたが、現在ではこの分野のリーディングカンパニーとなりました。
興味深いのは、Webサイトの中でももっとも広告効果の高い右上の位置で自社発行の雑誌を宣伝していることです。会社にとってもっともプライオリティが高いのは、もちろん“売上げ”ですが、この企業では印刷物を発行することでリーチが広がる、小売店まで手を伸ばせると考えたのです。
印刷物は死に絶えたと言われますが、今でも紙のデザインは大きなサプライズを与えます。「パブリッシング」は、「紙とそれ以外」と捉えるのではなく「紙に加えて何をするのか?」という考え方に変わってきているんですね。