最後の柱「iAd」は、Appleが販売・ホストするiPhone OSアプリ向け広告の配信プラットフォームだ。iPhoneアプリがユーザーの間で急速に拡大した理由の1つとしてJobs氏は、無料アプリや数ドル程度のアプリが数多く揃っていることを挙げた。
費用負担が軽いから、ユーザーは気軽にアプリを試し、その結果iPhoneやiPod touchが様々な場面で利用されるようになり、それがユーザーの拡大につながってきた。こうしたアプリが今後も無料で提供されるように、iPhone OSアプリ開発者の新たな収入源としてiAdを用意した。
モバイル広告というと、Googleがモバイル市場においても検索を軸とした広告事業を展開している。Jobs氏は「検索はデスクトップのケースであって、モバイルで検索は伸びていない」と断言した。「モバイルユーザーは多くの時間をアプリに費やしている。例えばレストランを探すときに、ブラウザで検索するのではなくYelpアプリを使うユーザーの方が多い」と続けた。
平均的なiPhoneユーザーは、1日に30分強の時間をアプリに費やしているという。3分に1度広告を配信したとすると、iPhoneユーザーは1日に10回モバイル広告に接することになる。今年の夏にはiPhone/iPod touchは1億台に到達する見通しで、単純に計算すれば広告配信機会は1日に10億回に達する。「これは極めて大きなチャンスである」とJobs氏。
モバイルアプリ内広告の欠点を解消する
ただし、このチャンスをつかむにはモバイルアプリ向け広告を見直す必要があるという。たとえば今日のモバイルアプリ内広告をタップすると、アプリを離れてブラウザで広告が表示される。アプリの利用が中断される上、ブラウザからアプリに戻るのが面倒で、ユーザーは次から広告をタップしなくなる。これではモバイルアプリ向け広告は衰退していくばかりだ。iAdではアプリから広告に画面が切り替わるもののアプリ内広告であり、ユーザーが広告を見終わったらアプリに戻る。また広告の途中でも、いつでもアプリに戻れる。
Jobs氏が既存のモバイル広告の欠点としてもう1つ指摘したのは、消費者に対する訴求力の欠如だ。これはWeb広告全般にいえることで、インタラクティブだが、面白くなく、テレビ広告のように消費者の感情に響かない。だからテレビ離れが進む今日でも、テレビ広告に大きな広告予算が注ぎ込まれていると述べた。
一方iAdでは、HTML5世代の技術を用いて写真や動画、ゲーム、Web情報を活用した広告を提供できる。広告主はアイディア次第で、表現力豊かなテレビ広告とインタラクティブなWeb広告の両方のメリットを兼ね備えた広告の提供が可能になるという。
iPhone OSに統合されたiAdをアプリ開発者は簡単な作業で、それぞれのアプリに組み込める。iAdからの売上は60%がアプリ開発者に分配される。これは広告産業における標準的な比率だという。