パルミジャーノとパルマハムの関係性
パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズのあとは、パルマハムの出番だ。パルマハムは、チーズをつくる工程の中で出てくるホエーという液体の乳成分をたっぷりと飲ませて育てた豚からできたもの。日本人で唯一のパルマハム職人である多田昌豊氏の話によると、パルマハム職人の醍醐味はなんといっても塩振りにあるのだそう。この塩梅でハムの味はもちろん、後々の熟成が大きく左右される。平均15kg~16kgの豚モモ肉に塩を振り、風通しのよい場所でじっくりと熟成させると、1年後には10kg~11kgほどになるという。この12カ月経ったものをパルマ品質協会の検査官が馬の骨でできた針を刺して香りを確認、合格すれば王冠マークが押され、晴れてパルマハムと認定されるのだ。我々素人にはただ「生ハムのいい匂い」としかわからないが、多田氏にかかると20種類ほどを嗅ぎ当てられるというからこれはもう職人技としか言いようがない。
ヴィンテージ・ポートともなれば、抜栓も大掛かりなことに(筆者撮影) |
そのパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズと、理想の薄さとされる0.7mmにスライスされたパルマハム、会場となったホテル日航東京のシェフによる料理の数々を、ポルドガル・ドウロワインと共にひとしきり堪能した後は、最後のショー、1998年ポートワイン・ソムリエコンテスト優勝者の馬場祐治氏によるヴィンテージ・ポートの抜栓である(ポートワインについての詳細は、こちらの記事を参照していただきたい)。ポートワインのコルクは通常のワインと違い、ソムリエナイフ要らずで開けることができる。また、飲み残しても保存が可能なように、開閉も自在にできるようになっているのだが、それでも40年50年経ったものになるとコルクが朽ちて抜栓が困難になる。
ではどうやって開けるのか。答えは、「焼き切る」である。まず、先が丸くあいたコテをバーナーでガンガンに熱しておく。それをボトルの首から差し込み、コルクの先端より下の部分に当てること約30秒。ゆっくりとはずし、コテを当てた部分に水をかけて冷却すると……。「ポキッ」とキレイに折れるのだ。まるで手品のよう。こうして1988年のヴィンテージ・ポートは無事に開けられ、振舞われたのであった。
どれも楽しいショーであったが、今回この3つの"熟成"を通して感じたのは、まず、いずれも厳選された原料を、厳しい条件(規制)下で、職人たちが1つひとつ丹念につくっていく必要があるということ。そうして出来上がった製品だからこそ、時間という極上のスパイスによってより気高く、よりたおやかに熟(な)れていくものなのだ、と。
撮影: Alfie Goodrich