一方でAT&TはiPhoneとの付き合いで苦しんだことで、多くの教訓やノウハウを学んだようだ。例えば従来までであれば、年収や住むエリアによってだいたいの利用傾向がつかめたが、iPhone登場以降はこうした分析が役立たず、より細かいプロファイルや分析が必要になったという。例えば都市部では一定数の学生が存在するが、講義のある9カ月と夏のオフシーズンの3カ月ではまるで行動が異なり、これがトラフィック計画に大きな影響をもたらしているという。
また独占契約を維持するため、ネットワーク品質の低下が指摘されると幹部らが米カリフォルニア州クパチーノにある米Apple本社へと出向き、Steve Jobs氏らを説得してソフトウェア改良でネットワークへの負荷軽減を依頼するなど、AT&Tだけでなく、Apple自身の技術向上にも貢献していたようだ。
ネットワーク増強で対応を進めるAT&Tだが、実際には工事完了までにかなりの時間を要しているのが現実のようだ。アンテナや中継設備設置にはかなりの人的リソースが食われるほか、工事のために自治体や建物主への許可の申請など、数段階のステップを踏まなければならない。AT&Tでは急増するデータトラフィックに対してフェムトセルやWi-Fiの組み合わせでの補完も計画しているが、なかなか対策が追いつかないのが現状だ。
だが一方で、ライバルのVerizonからiPhoneが登場するのは来年以降という話もある。「Apple、第4世代iPhoneではCDMA版の提供も計画か - WSJ報道」では、CDMA版iPhoneの大量生産が始まるのは今年9月以降としていたが、何人かのアナリストがAT&Tの独占契約が今年いっぱい続くことで、年内は出荷できないだろうと指摘している。とはいえ、Verizon向け提供がスタートするのは既定路線のようで、AT&Tは残り9カ月間でどれだけ顧客をつなぎとめられるか試されていることになる。