新JavaScriptエンジンによる高速化
IE9では、新しいJavaScriptエンジン「Chakra」を搭載した。最大の特徴は、マルチコアプロセッサに対応したことであろう。JavaScriptのコンパイルは、バックグラウンドで別のコアを使い実行される。そのため、IE9の実行と分離されることで、マルチコアプロセッサではページ読み込みやコード速度が向上する。実際のベンチマーク結果について、マイクロソフトでは、図12のような結果を発表している。
この結果によれば、IE8の6.4倍となっており、大幅に高速化が達成された。他のブラウザと比較であるが、Firefox 3.6とFirefox 3.7アルファ2プレリリース版よりは高速だが、Opera 10.50、Google Chrome 4、Safari 4.0.5よりは遅い結果となった。実際に筆者の環境(CPU Core 2 Duo 2.4GHz、Memory 4GB、Video NVIDIA 9800GT、Windows 7 32bit)で、SunSpiderを行った結果は、以下である。
IE9は934.0ns、Firefox 3.6は1022.8ms、Google Chromeは601.4msと、図12と同様な結果が得られた。ここで、もう1つデモを紹介しよう。[Graphics Demos]の[Falling Balls]である
IEのロゴに、SVGで記述されたボールが一面に配置される。ここで、[Drop the Balls]をクリックすると、すべてのボールが、画面下に落ちていく(図17)。
これらのボールの動きには、JavaScriptのエンジンが使われる。ブラウザによって違いを体感しやすいデモといえるであろう。比較してみていただきたい。IE9が現時点ではプレビュー版であり、今後のチューナップも想定されるので、JavaScriptに関しては、とりあえずの評価とすべきであろう。特にSunSpiderの結果については、マイクロソフトでは、SunSpider向けへのチューンは行っていないとしている。また、マイクロソフトもこれまで、「JavaScriptの実行速度のみがブラウザの絶対性能ではない」と力説してきた。実際に表示するページによっては、JavaScriptだけでは、ブラウザの性能を評価することはできないであろう。
しかし、IE8と比較して6.4倍という高速化は、実際に使っていても快適なことは間違いない。今後、ブラウザ選択に有力な選択肢が登場することはまちがいないといえるだろう。エンドユーザとして、期待感は大きい。
あくまでもプラットフォームプレビュー版
再度、図3を見ていただきたい。IE9プラットフォームプレビュー版には、アドレスバーやタブ機能もない。実際に、Webページの表示は、メニューバー(Page、Debug、Report Issue、Helpの4つしかないが)の[Page]から[Open]で行う。
図18 Openダイアログ |
ここにURLを入力する。正直、ブックマークのお気に入りもなく、実際に使用をするには、とても便利とはいいがたい。
今回のプラットフォームプレビュー版は、新たに搭載されたハードウェアアクセラレーションなどの新機能をテストしたり、パフォーマンスを評価するためのものであり、実用性はまったく考慮されていない。したがって、ここで、実用環境として使うには、かなり無理があるだろう。マイクロソフトでも、この点に関しては「開発者向けのバージョンで、日常的に使用可能なブラウザではない」としている。実運用は、もう少し待ったほうがよいであろう。IE9は、IE8とはまったく分離した形で、インストール・アンインストールが行えるので、試用する分には問題がないだろう。
IE9の今後であるが、ベータ版公開まで8週間ごとにアップデートが予定されている。アップデート繰り返すたびに、完成形に近づいていくと思われる。その過程で、さまざまなアプリケーションとしての機能も追加されるのだろう。マイクロソフトでは、IE9プラットフォーム開発者とのフィードバックループをスピードアップさせていくとしており、IE9の情報についてはIE公式ブログ(図3から閲覧可能)で、順次、情報提供が行われる予定である(図20)。
今後も動きがあれば、紹介する予定である。