さて、これで「iGroup」と呼ばれるネットワークが構成されたわけだが、どのような使い方やメリットがあるのだろうか。例えばコンサートの例を考えてみよう。アーティストのいるステージ側にiGroupに対応したデバイスを置いておくと、最前列に近い席にいるコンサートの参加者のiGroupデバイスとのトークンによる通信が確立される。さらにこの最前列のユーザーが後ろの席のiGroupデバイスのユーザーとトークンを交換し、ここでの接続も確立される。このように"デイジーチェーン"と呼ばれる数珠つなぎで巨大な近隣ネットワークを構成できるのもiGroupの特徴だ。

このケースではアーティスト側のデバイスが"Anchor (アンカー)"として動作し、上位のTrusted Serviceとの中継を行う親デバイスとなる。使い方はさまざまだが、ファン同士が集まったコンサートならではの情報交換やメッセージ送受信などが考えられるだろう。またコンサートのケースでは収集したトークンから互いの位置関係がわかるほか、iPod touchのようなGPSを持たないデバイスでも"バーチャルGPS"のような機能を入手することが可能になる(iPod touchでこの機能が使えるかは不明)。

Appleが提出した特許の図版によれば、iGroupは「iGroups」と呼ばれるiPhoneアプリのような形で実装されるようだ。iGroupsを起動すると近隣に存在するiGroupが表示され、そこに参加するかどうかを決められる。参加にあたっては、日付と時間、場所、タグ、参加メンバー名が表示されている。サンプルによれば、タグには「2008 WWDC」などの名称が記されており、iGroupの属性を示すものとなっている。

当該のiGroupに参加すると「Settings」「Calendar」「Address Book」「SMS」「Mail」といったメニューが出現し、iGroupのプロパティ編集やメンバー間での情報交換が可能になっている。また例が示すように、コンサートだけでなく、特定のイベントや場所に人が集まったときの情報交換ツールとして使うようなケースも想定しているようだ。