JR田町駅芝浦口前にある国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校

東京工業大学附属科学技術高等学校は、JR田町駅芝浦口の駅前にある。

1886年(明治19年)に一橋大学の前身となる東京商業学校の附設商工徒弟講習所の職工科として創立。120年を越える歴史を持つ。近年では、2002年からの3カ年、および2005年からの5カ年に渡り、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校として、「わかる」「えがく」「つくる」の3つの観点から「創造性の基盤となる力」を育て、また「いどむ」「わかりあう」という観点からの「未知の課題への挑戦力」「国内外とのコミュニケーション力」を育てるなど、将来の国際的な科学技術系人材を育成することに取り組んできた実績を誇る。

「SSHには国立工業高校として唯一、本校が選ばれた。研究、開発した教育システムを活用して、科学技術を志向する全人的教育を実施しており、創造力、独創性を育てる教育に加えて、倫理感の教育にも早い段階から取り組んできた。科学技術高等学校の生徒は、ICTの活用スキルにはまったく問題がない。そのICTスキルを活用して、教員が教えるのではなく、生徒自らがモラルを学習できる授業を実践している」と、国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校・市村禎二郎校長は語る。

同校の門馬進副校長も「ICTを活用した教育は、生徒の真剣味や理解度が大きく異なる。教科を問わずに幅広く活用していくことを積極的に考えたい」と異口同音に語る。

国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校・市村禎二郎校長

国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校・門馬進副校長

国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校・遠藤信一教諭

技術者モラルゲームは、科学技術高等学校の遠藤信一教諭と、東京工業大学の松田稔樹准教授が制作した教材で、1年次の「人と技術」の授業で活用されている。

1クラス40人の生徒が、1人1台という環境で日本HPのタブレットPC「HP EliteBook 2730p Notebook PC」を用い、ソフトウェアが出す課題に対して個人で考えたり、グループで考えたりしながら、結論を導くというシミュレーション型ゲームだ。

技術者モラルゲームを使用した授業の様子。PC専用教室ではないのも特徴

生徒は準備室に置かれた「HP EliteBook 2730p Notebook PC」を持って教室に入る

充電とともにアップデートなどもこの準備室で行っている

生徒は、製造業の企業の経営者となり、製品の安全性確保とコスト削減、あるいは消費者に対する高い品質の確保と利益の確保のどちらを優先するのかといった判断が求められる。ゲームの進行では50%の確率で、売り上げ上昇または売り上げ不振の状況が生まれ、それに対して、個人ごとに進行状況が異なり、それぞれに別の判断が求められる。

安全性を配慮せずに経営を続けると、不買運動や内部告発による経営陣の解任、株主総会での厳しい追及という局面に陥る。一方、安全性を配慮すれば、売り上げが不振でも信頼性が回復するといった結果になる。

経営者の立場のほか、営業部長、設計担当者、作業担当者、消費者センターの担当者といったそれぞれの役割の中でもどんな判断を下すべきかといったシミュレーションが行える内容となっている。

タブレットPCで技術者モラルゲームを起動したところ

「利益と信用のどちらを優先するのかという技術者としてのモラルジレンマを体験することができる一方で、客観的な立場から公平に判断し、利益だけを求めていたのでは会社は成り立たないということを学習することができる。利益を求める厳しい上司の言葉に、安全性を重視する決断しなくてはならないという会社の厳しい現実は未体験の世界。未就業の生徒であっても、ICTを活用することで、普段体験できないことを擬似的に体験でき、生徒の考えが及ばない結果や、心理的圧迫を加えるフィードバックにより、論理的に理解に留まらず、心情的にも理解できるようになることを期待している」と語る。