GDCのiPhone Games SummitでのMethenitis氏の講演についてはInformationWeekなどが報じている。

EFF同様にMethenitis氏も、AppleがiPhoneアプリ開発者に結ばせている契約は"一方的"と批判する。Appleが開発者に提供する情報は機密になり、逆に開発者がAppleに提供する情報はオープンになり得る。

ただ、こうした状況を作っているのはiPhoneアプリ開発者でもある。iPhone Games Summitでの講演に集まった参加者の多数はiPhoneアプリ開発者だと考えられるが、「iPhone Developer Program License Agreementを読んだことがある人?」という同氏の問いに対して挙手したのは全体の5%ほどに過ぎなかった。契約は契約者の同意を経て成立する。サインする前に、契約者はその内容を深く吟味する必要がある。それにもかかわらずiPhoneアプリ開発者の多くは、IPhone OSデバイス市場でいち早く頭角をあらわそうとするあまり契約内容をきちんと確認せずに同意しているのが現状だ。

だが契約書を読み、法的なものを含めて自分たちが置かれる立場をきちんと把握しないと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があるという。例えば、Appleとの契約ではiPhoneアプリ開発者に対してAppleが補償を求めており、もし開発者のアプリが原因でAppleが訴えられた場合、Appleの弁護士費用なども含めて訴訟コストを開発者が負担する可能性があるという。ほかにもApp Storeではグローバル規模の販売が可能になるため、販売するすべての地域のプライバシー保護法などを把握し対応しておかないと、イタリアにおけるGoogle幹部のプライバシー保護法違反のような問題が起こる。またSSL接続のような暗号化を用いている場合、輸出規制品目に該当する可能性があり、対象国で配信されれば罰金および有期懲役の可能性まで出てくる。

モバイルアプリは新たな市場であり、これから契約問題や法的な問題も整備していく必要がある。それはモバイル・プラットフォームを用意する側だけの役割ではなく、そのエコシステムに参加する開発者やユーザーも担うべき問題だ。EFFのLohmann氏はレポートを「Appleが真のリーダーになりたいのであれば、封建君主として君臨するのではなく競争と革新を促進させていくべきだ。開発者は契約内容の改善を追求し、iPhoneを気に入っているユーザーはそれを支持するべきである」と結んでいる。