Appleが現時点でiPhoneアプリのデベロッパーに対して課している制限として、フレームワークを構築するアプリ、例えばJust-In-Time (JIT)コンパイラやスクリプトエンジンの実装を許可していないことが挙げられる。これはつまり、最近人気のスクリプト言語や他の開発フレームワーク(Javaや.NET)をそのまま利用できず、Appleが標準で提供しているCやObjective-Cをベースとした開発環境を利用しなければならないということだ。
前述のAdobe CS5のiPhoneアプリ作成機能も、フレームワークを用意するような中間層形式ではなく、直接iPhone用のネイティブコードを生成することでこの制限を回避している。実際、CS5を通してコンパイルされたFlashアプリがすでにApp Storeの審査を通過しており、Apple的にもこうした開発環境の存在は問題ないと判断しているとみられる。今回ここで紹介する「MonoTouch」もそうした開発環境の1つだ。
MonoTouchは、米Novellが推進するオープンソースの.NET実行環境「Mono」プロジェクトがベースになっており、.NET Framework上で動作するソフトウェアであれば、そのままiPhone用アプリとして利用可能となる。もちろん、.NET Frameworkと組み合わせることが可能な言語であればC#であっても、各種スクリプト言語であっても問題ない。使い慣れた言語環境を利用してそのままiPhoneアプリ開発が行えるのがMonoTouchのメリットだ。1月末にリリースされたMonoTouch v1.9が最新バージョンとなっており、同バージョンではiPad向けのフルスクリーンアプリ開発が可能になっている。
デザイナーらが中心だったAdobe CSに比べ、こちらはどういった開発者がターゲットになるだろうか。ライセンス料が1ユーザーあたり400~1,000ドルと比較的高額なため、日曜プログラマやビギナーがiPhoneアプリ入門として利用するには若干ハードルが高い。だが、独立系ソフトウェアベンダがiPhone/iPad版アプリの開発を行ったり、企業の情報システム部がカスタマイズされた自社システム向けのコネクタを作成したりなど、エンタープライズ寄りの開発を行うのに向いているかもしれない。