アプリケーションを動かすためには、その動作環境を整備する必要があり、そのためには、各種のAPIをそろえたオペレーティングシステムが必須だ。ただ、iPhoneについては、Appleのみが製造しているため、他社の入る余地がない。メーカーなどが採用可能な携帯電話用のオペレーティングシステムとしては以下の4種類に大別できる。
・Android系
・Windows Mobile系
・Symbian系
・Linux系
このうち、古くから使われているのはSymbianとWindows Mobile系。しかし、Symbianはどちらかというと汎用のオペレーティングシステムというよりも、高性能端末の開発コストを下げることを想定している。たとえば、日本国内の富士通やシャープの製品のように汎用のオペレーティングシステムが使われていることを伺わせない端末も少なくない。もともと、マイクロソフトの携帯電話市場への参入に対抗して、EU圏の企業を中心に作られたオペレーティングシステムでもあり、複数の携帯電話メーカーがそれぞれの特徴を出しつつ、ネットワークやカメラ制御といった機能を共通化、部品化するために作られた。そのためもあって、表示部分を標準化しておらず、逆に小さな液晶の製品を作ることも可能にしていたのだが、アプリケーションが動作するプラットフォームとしては難しい部分があった。このSymbianに関しては、オープンソース化が行われ、MWC直前に発表がおこなわれている。
Linux系にもそういう傾向があり、やはりLinuxであることが見えない製品も少なくない。また、同じLinuxでも、アプリケーションプラットフォームとしては複数あり、それぞれが環境を整えているという面もある。AndroidもカーネルにはLinuxを使うが、アプリケーションの実行環境は独自のものだ。
今回のMWCでは、珍しくIntelとNOKIAが共同で発表を行った。NOKIAがサポートする「maemo」と、インテルの推す「Mobilin」が一緒になり、「MeeGO」というプラットフォームを提供することになったのだ。もともと、NOKIAとIntelは、Intelの「Moorestown」 モバイルインターネットデバイス向けのATOM系プロセッサ。周辺回路を統合し、スマートフォンクラスの製品を作ることが可能になる)」で提携している。Moblinは、このMoorestown用の標準的なオペレーティングシステムでLinuxをベースにしている。
IntelとNOKIAは共同で発表を行った。IntelがサポートするLinuxベースの「Moblin」とNOKIAの「maemo」を合わせ、新しく「MeeGo」というLinuxというモバイル用のディストリビューションを開発する |
maemoは、NOKIAのインターネットタブレット用のオペレーティングシステムで、やはりLinuxをベースにしている。携帯電話機能を持たない「Internet Tablet N700(2005年発表)」用として登場した。このIntenet Tabletは、携帯電話と組み合わせてメールやWebブラウズを行うデバイス。無線LANやBluetoothは搭載していたが、最新のN900では、携帯電話機能を搭載するなど、大きく変化してきた。Maemo自体はオープンソースプロジェクトで、これまでのN700~N810といった機種が携帯電話ではなかったため、ユーザーが自由に改良できるモバイルプラットフォームとして一定の人気を持っていた。
しかし、NOKIAはSymbianも所有し、MoorestownではMoblinも採用する必要がある。こうしたことから、Symbianについてはオープンソース化し、実質上他社への販売、サポートを手放した。そしてMaemoに関しては、Moblinへと統合することで、コミュニティを引き継いでもらうのだと予想される。実はNOKIAは、このほかにもLinuxのGUIツールキットとして著名なQtを開発したトロールテックを買収している。
有る意味、NOKIAは手を広げすぎていたのだとおもわれる。業界全体が携帯電話のアプリケーションに注目している現在、複数のプラットフォームを持っていることは、自社の製品内で、開発者の取り合いといった状況を生み出しかねない。ここで、プラットフォームを整理し、スマートフォンの戦略を一本化する必要があったのだろう。