――それでは、個々の作品についてお伺いします。二村監督は「Origins Part1&2」を担当なさっていますが、この「Origins」が二部構成になるというのは、最初から決まっていたのですか?
二村秀樹監督「当初は、『Halo』のゲーム世界で描かれていない歴史も含めた一本の短編を作ってほしいというお話だったんです。それでプロットなども頂いていたのですが、色々とディスカッションを重ねていくうちに、10分という時間では収まらなくなったので、結果的に二本に分けたという感じです」
――二部構成にすると作業量も増えるのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがでしたか?
二村監督「二本にしてしまっても、全体の作業量が極端に増えることはないような設計で進めるつもりだったんです。二部構成にしたほうが、作業自体は逆にやりやすくはなりましたし」
――単純に二部構成になっているというだけではなく、一部と二部では作品のテイスト自体も大きく変わっていますが、そのあたりの狙いはどういったところにありますか?
二村監督「後半に関しては、ゲームの世界と関連している部分があるので、表現的にも近い描き方をしたい、という希望があったんです。実現できる程度で、ゲームのディテールに近づけたいと思っていましたから。それに対して前半では、ゲームにも登場する建造物が出てはくるのですが、異星人の実態像などはっきりとしていない状態だったので、アニメーション的な処理に変更するゆとりがあるとも思っていました。それも含めて当初から一応、手法を大きく変えて作ることを考えてはいたんです。ただ、問題点など現場で色々とやりくりしているうち、出ては変更していったところもあり、手法を変えない方が良かったかな? とも思ったときはありましたが、様々な条件や付加価値なども考えつつ、最終的には決定したという感じです」
――前半の描写は塗りがかなりフラットになっていて、過去の時代を語っているという点でかなり雰囲気が出ていると思います
二村監督「フランスのバンドデシネ作家でメビウスという有名な方がいらっしゃって、その方の原作をフラッシュアニメにした作品があったんです。コミックをそのままアニメーションにした感じで、わりとフラットな作風になっていて、前半部分はその雰囲気を狙った作りになってはいます。かなり悩んだのですが、やはり変えるなら思い切りやらないといけないかな?という判断で、結果あのような作画になりました」
――作業量はあまり変わらないというお話でしたが、あそこまでテイストが違うと、実際の作業ではかなり混乱することもあったのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがですか?
二村監督「お互いのスタッフからは、『これで本当に大丈夫ですか?(笑)』といったことを質問されましたが、『大丈夫です(笑)』って答えていました」
田中氏「前半と後半は別チームで制作を行っているんですよ」
二村監督「二班体制に分けていました」
――ちらっと横を見ると、同じ作品を作っているはずなのに、全然違うことをやっているという感じですね
二村監督「そうですね。ただ、僕が絵コンテを作った時点で、極端な話をすれば、一カットずつ処理が変わっていても、成立するようにはしていたつもりでした。二部構成とはいえ、流れは繋がっている話なので、伏線などは同じようなカット内容の作り方をしていましたし。あと、今回の企画は非常にバラエティに富んでいるものだったので、この作品においても画一的なイメージにしなくても大丈夫かな?という考えもありました」
――おそらく、映像だけを観ていると、同じ監督が同時期に作っているとは思えないぐらいの差がありますよね
二村監督「『パワーパフ ガールズ』というアニメがありまして、僕自身はあれぐらい違う表現になってもいいのかな?(笑)と冗談で思ったりしたぐらいなのですが、原作がしっかりとしたリアルなものなので、さすがにそこまで崩す事はできませんでした」
――できあがったものは二村監督の狙い通りのものになりましたか?
二村監督「いやー。僕の場合、作った作品で満足することってほとんどないんです。だいたい、アラしか見えてこなくて、後になってお酒を飲みながら後悔でぐったりしているような感じです(笑)。なので今後は、観ていただいたファンの方が、どこまで気に入っていただけるのか、そして気に入っていただけてないか、そういったところの反応を見ていきたいとは思っています」