JALの減便を「補完」するデルタ
では、JALが提供するJMBはどうなのだろう。
JALはワンワールドからスカイチームに移籍することが確定的。コンチネンタル航空と同じ移籍組となるわけだ。そうなれば、日米(太平洋)区間での便利なネットワークを構築すべく、こちらもスカイチームのアメリカ系航空会社、つまりデルタ航空(ノースウエスト航空便含む)と共同でATIを申請。認可されれば同区間で約60%のシェアを占める強力な路線ネットワークを構築できる。
デルタ航空は単独では世界最大の規模を持つ航空会社で、日米区間でも約30%のシェアを持つ。たとえば現在のワンワールドに所属するアメリカン航空は日米区間に4路線しか就航していないが、デルタ航空のそれは10を超える。たとえば2010年1月18日時点での成田-ハワイ間を例に挙げると、アメリカン航空はこの区間を飛んでいないため、JMB会員がマイレージを貯められるのはJALの自社系3便のみ。ところが、スカイチームのデルタ航空は2便を運航しているから、(JALが移籍した場合は)JALの自社路線と合わせて5便から選べる。
また、デルタ航空は、アメリカン航空もJALも運航していない区間に直行便を就航している。たとえばメジャーリーグ(MLB)のイチロー選手が所属するマリナーズの本拠地、シアトルなどもそうだ。
さらに、デルタ航空は成田からバンコクや香港、シンガポールなどアジア各地への直行便も運航。経営再建中でJAL自体の便数が削減されているが、そういう意味でもデルタ航空の豊富な日本路線はその削減分をいくらか補完するといえる。
旧ノースウエスト会員にも魅力
なお、デルタ航空が傘下に収めたノースウエスト航空は、路線が豊富なだけでなく、日本路線を60年以上も運航してきた(JALより長い)歴史がある。そのため、外資系の航空会社としては日本人のマイレージ会員も多く、そうした旧ノースウエスト航空(ワールドパークス)やデルタ航空のマイレージ会員にとっても、JALがスカイチームに移籍することで、JALの国内外の便でマイルを貯めたり、使ったりできるようになるメリットが出てくる。
ちなみに、スカイチームには大韓航空も加盟している。大韓航空は日本国内の15都市に就航しており、JALがスカイチームに移籍すると、国際線の少ない地方在住者がソウル経由で世界各地へ行く際に、JMBと大韓航空のマイレージ会員両方にメリットが生まれる。
激動の時代突入で外資系も要検討
JALの経営再建を担う企業再生支援機構は、「マイレージ保護」を公表しているが、アメリカでの前例などを見ると、マイレージは大手航空会社にとっては競争力確保のため、航空事業再生に必要なサービスとして継続されるケースが多い。JALの売上規模はこれから30%の減少になると言われているが、スカイチームとの提携はJALの便数減による路線ネットワークの縮小をカバーする一定の役目を果たす。それは、つまりJMBのマイレージ会員にとって旅する際の魅力が減るのをカバーすることでもある。
AMCやスターアライアンス系のマイレージには、いま勢いがある。ただ、JMBもJALがスカイチームに入れば状況は変わる。ワンワールドからスカイチームへの移籍は2011年4月と予定されているが、いずれにしろ、マイレージ事情は激動の時代に入った。
これからよく情報を集めて、JMB、AMCの日系航空会社とだけでなく、日本路線の便数の多いユナイテッド航空やデルタ航空などの外資系も候補に挙げながら、どのマイレージを活用するか決めたいところだ。