明らかに異なる映像のなめらかさ
まずは今回の検証方法を説明しておこう。検証に用いる映像はNVIDIAがPureVideo HDのプロモーション用にアップロードしたこちらの映像だ。Youtubeでは映像のURL末尾に「&fmt=37」を付けることで1080pで再生、「&fmt=22」を付けると720pで再生できることから、この2つのHD解像度で再生させてみる。また、Flash Player 10.1β導入の前に、最新の正式版であるFlash Player 10.0をインストールし、これと比較することとした。なお、あらかじめストリームをバッファに全て溜めた状態で、接続速度等の外的要因を排除した状態で検証する。
さて、Flash Player 10.0での再生させた結果が以下のスクリーンショットだ。Youtubeに組み込まれたVideo Infoでコマ落ち具合を見ると、1本再生し終えるまでに720pで約1,500コマ、1080pで7,000コマほど発生していることがわかる。実際、720pはカクカクしつつもそこそこ見られるが、1080pではそもそも視聴に耐えられるものではない。そして今回の評価機はデュアルコアAtomを搭載した製品。シングルコアAtomのノートではさらに多くのコマ落ちが出ることは容易に想像できる。
では次にFlash Player 10.1βを導入する。Flash Player 10.1βの導入の際には、旧バージョンのFlash Playerをアンインストールする必要がある点に注意が必要だ。コントロールパネルのプログラムの追加と削除では完全にアンインストールできないため、Adobeのサイトから専用のアンインストーラをダウンロードし実行する。クリーンな状態になったところでAdobe Labsから実行ファイルをダウンロードし、適用しよう。インストールが無事に終わったなら、バージョン確認もしておくと安心だ。
先ほどはコマ落ちがひどかった720p、1080p映像だが、Flash Player 10.1β導入後は一転、コマ落ちの無い状態でスムーズに再生されるようになる。Video Infoでは数コマのコマ落ちがあるように表示されているが、これは実際にはページ表示から再生停止までの間にカウントされたもので、バッファ完了後に再生してもこれ以上増えることが無かった。
そしてフルHD再生時のCPU使用率に関しても比較しておこう。まずデコード処理が全てCPUにかかってくるFlash Player 10.0環境では、仮想的な4コアのうち全てが使用率100%に貼り付く状態だ。この状態でも7,000コマ以上のコマ落ちが発生するのだから、フルHD再生には高い処理能力が必要であることがわかる。一方でFlash Player 10.1β環境では4つのコアのうちの2つが50%程度の使用率であるにすぎない。この様子なら、シングルコアAtom + NVIDIA IONという組合せでも十分に再生できそうである。また、この状態でもうひとつブラウザを開きウェブを閲覧してみても100%には至らなかった。
非力なCPUでフルHDストリーミングを楽しむ最適解
今回、NVIDIA IONノート「Prime Note Cresion NA」でFlash Player 10.1βを試したが、なかなか実用的な組合せであることが確認できた。NVIDIA IONのPureVideo HDなら、DVDやブルーレイの視聴時にも再生支援機能、高画質化機能が利用できることから、メディア再生の面で見れば一般ノートPCと同等か、デコーダー非搭載ノートと比べれば、低価格な上にもっと快適に楽しめることになる。Flash Player 10.1はβ版ということもあり、まだ一般ユーザーが手軽に試せる状況に無いが、正式版の早期登場に期待したい。
さて、現在Atomを取り巻く環境は変化してきている。インテルの最新Atomプラットフォーム「Pine Trail」では、メモリコントローラとグラフィック機能がAtom本体に取り込まれ、従来のチップセットはSATAやUSBなど各種インタフェースを制御するだけの機能にまで縮小された。そのため、Pine TrailでIONが現在の形態のまま登場することは見込めない。なんにせよIONのメディア再生機能はAtomのような非力なCPUにとっては重要であり、継続が望まれる。