既報の通りIntelは、32nmプロセスで製造されるグラフィック機能内蔵の新CPU、対応チップセット、ワイヤレス通信モジュールなどを一斉に発表した。
CPUだけでも20製品を超える幅広いラインナップを投入したIntelには、これまで同社製品が主に搭載されていたPCのみならず、あらゆる情報機器にさらに強力な処理能力が必要になるという見通しがある。Intelアーキテクチャ(IA)の応用分野が今後どのように拡大していくのか、2010 International CESの基調講演で同社CEOのPaul Otellini氏が説明した。
CES最大の話題「3D」がプロセッサ需要も喚起する
舞台に登場したOtellini氏はまず、同日発表したばかりのCPU製品に触れながら「これらの32nmプロセッサは、Intelが最初に出した『4004』に比べ5,000倍高速で、トランジスタあたりの価格は10万倍安い」と述べ、この40年足らずで飛躍的な性能向上とコモディティ化が進行したことを強調。
その強力なコンピューティングパワーが真っ先に求められる用途として挙げられたのが、昨今のAV機器業界で最大のテーマとなっている3D映像だ。Otellini氏は、2007年と2009年を比較すると、HD解像度に対応したテレビの売り上げは全世界で2倍、米国市場だけで見れば4倍にも伸びていると話し、「HD」が業界の牽引役になっていたと振り返る。そしてこれからは、「3D」によって同様の市場拡大が起こり得ると指摘する。
3D映画を制作する際に必要なレンダリング時間が加速度的に大きくなっているというデータの紹介の後、会場では実際に映画やスポーツ、ゲームなどの3D映像が上演され、3Dコンテンツの普及拡大によって今後この分野ではますます多くの処理能力が必要になることが示された。また、Core i7を搭載したAlienwareの高性能PCを用いたデモンストレーションでは、フルHD解像度の3D映像を制作してYouTubeにアップロードしたり、Blu-ray Discに保存したりといったことが個人でも可能とアピールされ、従来比2倍の情報量となる3D映像を扱うためには高性能CPUが不可欠であると強調された。
『Shrek(シュレック)』の制作における3D CGレンダリングの時間は、シリーズを重ねるごとに加速度的に長くなっている |
Alienwareの高性能PCでフルHDの3Dムービーを編集するデモ。両眼用の映像を扱うため、必要な処理能力は単純計算で2倍になる |
また、映像に関する技術としては、無線LANを利用してHD解像度の映像を伝送する「Intel Wireless Display」(Otellini氏はこれを短く「Wi-Di(ワイダイ)」とも呼んでいた)のデモンストレーションも行われた。これは今回のCESにあわせて発表された新フィーチャーのひとつで、ノートPCとテレビを無線LAN経由で接続し、PCにある動画や写真などを手軽に大画面で楽しむことのできるものだ。
Wireless Displayの利用には、CPUにCore i7-620M/Core i5-540M/520M/430M/330M/Core i3-350Mのいずれか、チップセットにHM57/HM55/QM57/QS57のいずれか、無線LANモジュールにCentrino Advanced-N 6200/Advanced-N+WiMax 6250/Ultimate N 6300のいずれかをそれぞれ搭載したノートPCと、テレビ側にサードパーティ製のWireless Display対応無線LANアダプターが必要とされている。
加えて、昨年秋のIntel Developer Forum(IDF)で発表された家電組み込み向けSoC(System on a Chip)の「Atom CE4100」に関して、具体的な搭載製品としてOrange(France Telecomのサービスブランド)のIPTVサービス用セットトップボックスが紹介された。
放映中の番組プレビューが生のストリーミングで提供され、円筒型の3Dユーザーインタフェース(UI)上に並べて表示される。オンデマンド放送やYouTubeのコンテンツ、ゲームなども同一の画面からアクセス可能となっており、IAアーキテクチャの採用によってあらゆるコンテンツを楽しめる環境が実現されていることがアピールされた。