注目のEUROTECHの「AURORA」
これまで、ヨーロッパではフランスのBULLとドイツのNEC High Performance Computing EuropeがIntelベースのクラスタスパコンを作っている程度であったが、今回のSC09でAURORAというシステムを引っ提げて新たにスパコンメーカーとして登場したのが、オーストリアとの国境近くの北イタリアAmaroに本拠を置くEUROTECHである。
使用しているCPUはIntelのXeon5500(Nehalem)で、ノードあたり100GFlops(2ソケットと推定される)、これに最大24GBのDDR3メモリと160GBのIntel製のSSDが付く。そして、この筺体にはこの計算ノードを240ノード収容し、合計24TFlopsという高密度となる。そして、AURORAは再構成可能なネットワークプロセサを持ち、これらの計算ノードを60Gbpsの3D TorusとQDR Infinibandで接続する。また、高速のノード間同期のための専用ネットワークも備えている。
同社のブースに展示されていたのは、このネットワークを制御するインターコネクトボードで、表面にはLSIが16個搭載され、裏面には光のインタフェースモジュールが見える。
そして、この写真には写っていないが、このボードは水冷のコールドプレートで冷却される。
I/Oをどのように処理しているのかは不明であるが、AURORAの計算ノードとインターコネクト部分は完全水冷である。したがって、まったくファンが無いし、通気口もない。
通気口が不要なため、前面パネルはLCDタッチパネルとなっている。SC09の展示では、オレンジ色の文字が縦書きにされて流れるような表示であったが、単なる装飾だけではなく、保守のインストラクションなども表示できるのであろう。水冷とあいまって、とにかく、今回のSC09での展示で一番クールな設計であった。
富士通は次期スパコンを展示
Top500で国内第2位のJAXAのFX1システムを納入した富士通のブースでは、その次期製品となる8コアのSPARC64 VIIIfxを使うスパコンシステムが展示されていた。
計算ノードボードはIBMと同様に水冷で、黒っぽい64枚のDIMMの間に4つの水冷のCPUモジュールが見える。そして左端の4個の水冷のモジュールがインターコネクトLSIと考えられる。
右側の写真の筺体は上下に各12枚のボードを挿入し、水冷のパイプが接続される構造になっている。
IBMのPOWER7はFat Treeのインターコネクトであるが、富士通は6次元Mesh/Torusと異なるトポロジである。このインターコネクトに関しては、SC09の参加者に配布された2009年11月号のIEEE Computerに論文が掲載されており、12ノード(ボード3枚)を単位として2×3×2の直方体を作り、それを要素として3次元トーラスを構成している。また、会場では次の写真のようなインターコネクトの模型が展示されていた。
NECはExpress 5800を展示
昨年はSX-9ベクトルスパコンの内部を公開していたNECであるが、今年は理研の次世代スパコンから撤退してしまい意気の上がらない展示で、SX-9は筺体全面のパネルだけのモックアップとExpress 5800サーバやワークステーションの展示に留まった。
また、Exhibitor Forumでもヨーロッパ部門が開発したNehalemを使うLXサーバが主力HPCサーバとして紹介され、Express 5800は小規模システム用として紹介されるなど、チグハグな印象を受けた。
しかし、Exhibitor Forumでは構想段階と断ったものの、SX-9とバイナリ互換の次世代ベクトルスパコンについて発表され、NECはベクトルスパコンを継続する構えである。
日立はパネルだけの展示
NECと共に次世代スパコンの開発から撤退した日立のブースは実ハードウェアの展示はなく、パネルだけのちょっと迫力に欠ける展示であった。しかし、IBMのPOWER7 CECのマザーボードのプリント基板は日立製とのことで、日立もIBMと同様のハードウェアを国内で販売することになると思われる。