快適にPCを使うとなると、処理性能だけでなく入力性も重要になる。キーピッチは17mmと11.1型モデルでは標準的だが、キーの間が開いているのでタイプミスしにくく打ちやすそうだ。しかし、実際のところは触れてみないと分からない。だから店頭でチェックする。誰だってそーする。筆者だってそーする。筆者はノートPCの入力性をチェックする際、「2」と「0」キーを強く打つようにしている。これらのキーは本体の固定ポイントから離れた位置にある場合が多いので、設計が甘いモデルだとガタガタとたわみ、優良なモデルは微動だにしない。作りの善し悪しがすぐに分かるのだ。
しかし、VAIO Xは不思議だった。ガタガタ感はないが、強く押すとキーボード面全体がしなる。入力性は決して悪くなく、ストレスなく何時間も原稿が書けると感じたが、打鍵の強い人は独特のクセが気になるかもしれない。これについて林氏は「一枚もののアルミ板をパームレストにして、キーボードを完全に接着しているんですよ。各キーを独立させた「アイソレーションキーボード」と呼ばれる構造で、取り付け精度不足で部品が浮いているような感じにはなりません。ただ、筐体を薄くフラットにしたことで、画面を開いたときに、本体奥側は底面でなく、液晶パネルの底辺が接地する構造になっています。このため、強くキーを叩くと全体がしなると感じるのではと思います」と解説する。
VAIO Xのキーボード面は、キー部分をくりぬいた1枚板のアルミを採用している。右の写真はモックだが、その段階から決定していた仕様だ |
これだけ手間をかけたPCながら、実売価格は100,000円強。これは、ソニーが本気になって「ソニーらしいヒットマシン」にすべく、戦略的に投入したモデルと考えるのが自然だろう。しかし、現在のVAIO Xの反響に、社内は「予想以上」の声であふれているそうだ。
林氏は「僕は予想通りと思っていたんですけどね。もともと、通常のモデルと違う経緯で開発が始まった例外的なPCだったので、どんな反応がくるのか見えにくかったのでしょう」と想像していた。そして星氏は戦略的な価格設定説を否定し、「採算がとれています」と断言する。
では、どうやってVAIO Xは生まれ、100,000円強の低価格を実現したのだろう。後半はVAIO X誕生の経緯と安さの秘密に迫りたい。俺たちの取材はまだ始まったばかりだ!