――カップリング曲となるエンディングテーマ「彼方のdelight」についての印象を教えてください

atsuko「こちらは懐かしさを感じるメロディやアレンジ、歌詞の雰囲気で、80年代のバンドテイストの曲になっています。歌詞は『アスラクライン2』に出てくる(水無神)操緒ちゃんの気持ちを書いたもので、ちょっとした"失恋ソング"になっています。でも、悲しいとか辛いというだけの歌詞ではなく、きっといつか振り向いてくれる、振り向いてくれたらいつでも私はここにいるからっていう、"女性の強さ"のようなものを描いています。アニメのエンディングが歌詞にあうような絵になっていたので、すごくうれしかったですね」

KATSU「メロディのキャッチーさでいうと、『彼方のdelight』のほうが主題歌的なアレンジをつけやすい曲で、普通にアレンジしてしまうとオープニングのような曲になってしまうんですよ。なので、あえてその方向に持っていかない"ガマン"が必要でしたね。メロディの持っている強さ、そして歌詞の内容をストレートに聴いてもらうためには、デジタル色の強い、主題歌的なアレンジにしないほうがいいんですよ。そういった意味では、この曲にはあまり"飾り"が加わっていないので、素直に聴いていただきたいですね」

atsuko「angelaとしてはオープニング・エンディングとも主題歌を担当するときは、テンポの速い曲とバラードみたいな感じで、異なるタイプの曲がセットになることが多いんです。ですが、今回は2曲ともテンポが速くて、曲調はマイナー。となると、アレンジで違いを出したくなるんですよ。同じような曲だねって思われたくないというところもあると思います」

KATSU「僕としては、カップリングの曲がおまけみたいになるのが一番嫌なんですよ」

――気持ちは常に両A面という感じですか?

KATSU「それよりもむしろ、カップリングにいい曲が入っている、というポジションにいきたいですね。angelaのカップリングには本当にいい曲が多いんですよ」

atsuko「自画自賛だ(笑)」

KATSU「すごくいい曲なのに、アルバムにも入っていなかったりするんですよね。『Spiral』のカップリングだった『Link』もそうですし、『Beautiful fighter』のカップリングの『Darling』も。僕的には、カップリングに好きな曲が多いですね。"カップリング美学"のようなものがあったりもします」

――「彼方のdelight」は操緒を意識した歌詞ということでしたが、「オルタナティヴ」の歌詞はどのあたりを意識していますか?

atsuko「第一期のオープニングだった『Spiral』は、主人公の智春の目線で書いた歌詞で、突然奇妙な事件に巻き込まれていく感じを表現したのですが、今回は第二期ということで、もう少し掘り下げてみたかったんですよ。それで、プロデューサーと話をしたところ、第二期では、主人公の智春はいろいろなものを選択していかなければならないということで、君を守るのか、それとも君を犠牲にしてまで世界を守るのかという選択もありますし、女の子だったら操緒ちゃんなのか、奏ちゃんなのかという二者択一もある。いろいろなものを二者択一で選ばなければならないというのは、けっこうジレンマになるじゃないですか。どちらも大事で、どちらを選んでいいのかわからない。でも、どちらかを選ばなくてはいけない。そんな中で戦うことを選んでいく智春の強さも描きつつ……。あと、なぜかこの男の子はモテるんですよ。なので、いつも女の子に助けられてズルいなっていう、私の気持ちもちょっと含まれています(笑)。歌詞の中に『単純に君が大事 思惑は君も大事』というフレーズがあるのですが、実はこの"君"というのは、矛先が違っているんですよ。『君が大事だけど、こっちの君も大事』みたいな(笑)。そういった、ちょっとズルいなっていう思いも込められています」

KATSU「深いなあ(笑)」

――曲を聴いているだけだとわからない部分ですよね

KATSU「僕も今聞いて、初めて知りました(笑)」

――ちなみに曲を作るときに、作品に関する情報はどの程度まで事前に仕入れているのですか?

atsuko「原作があれば読むようにしていますが、『アスラクライン』の場合は、読んでいるうちに、アニメのほうに追い越されてしまいました(笑)。作品に関する情報はもちろんあったほうがいいのですが、悩みすぎるときもあるので難しいですね。ただ、自分の思い描いている部分が、原作の方や制作スタッフの方々とまったく違っていると怖いので、作品の世界観や方向性についてだけは必ず事前に話し合うようにしています」

KATSU「僕の場合、情報は多ければ多いほうがいいと思っているのですが、あまり情報がありすぎると、アニメ本編がはじまったときの楽しみが減ってしまうのが、ちょっと嫌なところですね(笑)。情報にもいろいろありますが、僕が絶対に欲しいのは"ロゴ"なんですよ。たとえば、『アスラクライン』の場合は、"歯車"がすごくイメージ的に使われていたので、曲を作るときは"歯車"からいろいろな想像をしました。実現はできなかったのですが、第一期の時にはオルゴールをいれてみたいというアイデアもありましたね」

――情報は多いほうがうれしいということですね

KATSU「どこにどんなヒントが隠されているのかわからないので、アニメに出てこない設定でもいいからとにかく欲しいというぐらいの欲しがり屋さんなんですよ(笑)。ロゴ以外だと、キャラの顔や服装といった視覚的な資料があると、イメージを膨らませやすいのでうれしいですね。とにかく情報がないと不安になるんですよ。『アスラクライン』の場合は、原作があるからまだいいほうで、『宇宙のステルヴィア』や『蒼穹のファフナー』のように、原作のないタイトルになると、もう何が正解なのかがわからないじゃないですか。やはり主題歌というのは作品のテーマを歌わなければいけないので、何でもいいから情報は欲しいですね」

(次ページへ続く)