風見鶏の視線

風見鶏が示すのは1日およそ18万人が行き交う羽田空港の人の流れ。顔が映らないアングルから撮影した映像から歩いている人を検出し、今最も多くの人が流れている方へ向く

出発の星座、地上の星座、星に座る椅子

空港内に星空が出現。天井に敷き詰められた3000個のLEDは、羽田空港完成日の星座と同じ位置に配置。「出発の星座」は、羽田空港から飛行機が離陸する時刻と連動。時間になるとLEDが飛行機のシルエットを描き、実際に飛行機が向かう方角へと飛び立ってゆく

「地上の星座」はPASMOなどの交通系ICカードに記録された移動履歴と連動

「星に座る星座」は出発ロビーの椅子と連動してLEDの輝きが変化するしくみになっている

まばたきの葉

木の幹に見立てた白い円筒オブジェに、開いた目と閉じた目が裏表に描かれた木の葉状の紙を差し込むことで、内蔵のファンが空気を吹き上げ、葉が円筒の先から飛び出る作品

木陰のスクリーン--鳥の離発着

回転するプロペラに映し出されるのは鳥のアニメーション画像。飛行機の離陸時刻と連動しており、時刻になると鳥が飛び立つ。鳥の顔を自分の顔にコラージュできるしくみも

一部の作品は、今年いっぱい展示することが決定している。過剰なインフォメーションを排除し、展覧会タイトル通り“空気”のように空港内に存在する作品。

「あんなに大きな『空気の人』がいるのに気づかず通り過ぎてしまう人もいるんです」と広報の上條桂子さん。「ギャラリートークの際に"たくさんの人に気づかせるだけがアートじゃない"と箭内道彦さんがおっしゃっていて。もちろん気づいて欲しいんですが(笑)、非目的客に対して邪魔にならず、作品を探す楽しみがあるというご意見もいただきました。それがデジタルパブリックアートのひとつのあり方なのかもしれません」

デジタルパブリックアートはまだ発展途上のジャンル。しかしながら、鑑賞する人を選ばない公共の場において、作品はより深く訴えかけてくるように感じられた。技術とアイデアのせめぎ合い、プライバシーへの配慮、公共の場という規制など、困難な壁を乗り越えた成果は大きい。今後の展開が待たれる。