先代の想いを受け継ぐ

――創業は1971年と歴史がありますね。

すた丼を考案したのは、今は亡き先代です。もともと先代がラーメン屋を個人で経営しており、その店のサイドメニューだったのがすた丼です。先代はとても男気のある人で、多摩地区の若い衆からは非常に慕われていました。18歳から店でアルバイトとして働いていた私も、その1人だったというわけです。

――先代はどんな方だったんでしょう。

当時の多摩地区の不良グループの取りまとめ役と言いましょうか……。先代自身もちょっと昔やんちゃな時期がありまして、また元ボクサーだったのもあってか無骨で荒々しいところがありました。でも面倒見が良くて、どんどんファンができていったのです。すた丼は、「若者に腹いっぱい食わせてやりたい」という先代の想いから誕生したのです。

――その熱意を受け継いだわけですね。

当社では一子相伝ならぬ、"一丼相伝"として受け継いでいるのです。だから店内には、スタッフの威勢のいい掛け声がいまでも飛び交っています。スタッフは黒のTシャツ姿に頭にバンダナを巻くといういでたちで、昔からの"元気を売る"というスタイルを変えていません。さらに店内には、「味わいつつ、ぶっこむべし」と筆文字で力強く書いた「絶対の掟」という看板も設置し、"気合十分"の雰囲気を演出しています。当店ではすた丼の昔ながらのファンが多く、中でもいま一番好調なのは秋葉原店。31坪の規模で1日に約800人が来店しています。ランチになると大行列です。

――すた丼以外のメニューも教えてください。

すた丼と同じイタリア産豚肉とピーマン、キャベツをピリ辛味に炒めたのが「ピーカラ丼」(通常サイズ690円・東京23区内店舗限定)です。あとは「生姜丼」(通常サイズ580円・東京23区外店舗の価格)などもごはんが進むのでとても人気です。牛モツの醤油味スープを使ったつけ麺「もっつけ麺」(730円・東京23区外店舗の価格)も投入しました。メニューは約10種類をラインナップしています。

すた丼に続く人気メニューが「ピーカラ丼」(東京23区限定)。豚肉とピーマンのピリ辛味炒めを具材にしている

9月19日発売した「もっつけ麺」(一部を除く店舗で販売)。牛モツの醤油味スープを使用

――今後の展望を教えてください。

11月14日には道頓堀店を出店して大阪に進出します。今後は大阪や名古屋、博多など全国の主要都市に出店を重ねて、すた丼を全国ブランドに育て上げていきたいです。私自身、昔からずっとすた丼のファンだったので、すた丼が最強の丼であることを証明していきたい。それが先代に対する義理でもあり、すた丼に対する私の義務でもあると考えています。



すた丼が誕生して38年。人間でいえば、中年にさしかかったいい感じの大人である。それくらいの時を経て、東京・多摩地区で根強い人気だったすた丼が、いままさに本格的に全国進出しようとしている。早川社長の「すた丼は食べ物というより、1つの文化」という言葉がとりわけ印象的だった。