――内野さんはこの作品のオファーを受けて「これだ!」と出演を即決されたそうですね。
内野 : 「それはね、ホンの魅力なんです。シナリオを読んだときに、構成がすごくおもしろいと思った。あと、エレベーターに閉じ込められた中で起こる密室劇に惹かれました。極限状態に置かれたとき、役者ってどんな風になるのか見てみたいという気持ちが昔からあったんです」
――エレベーターでの密室劇はいかがでしたか?
内野 : 「本番はエレベーターの四方の壁が外れるセットの中でカット毎に撮って行ったんですが、あの閉ざされた狭い空間の緊迫感っていうのは、カット撮りだとどうしても出にくい。そこで監督が本番前の数日間、役者を実際のエレベーターのような四角四面な空間の中に閉じ込めてリハーサルをやってくださったんですね。頭で考えた演技ではなく、狭さを体感したうえでの演技をまずやらせてもらえたのはありがたかったですね」
堀部 : 「内野さんも含め、役者さんがみんな生の緊迫感を大切にする姿勢で現場にいらっしゃいましたね」
内野 : 「たとえば複数の役者さんが共演しているシーンで、ある役者さんの表情だけを撮るときに、ほかの役者は休んでいいよってことに普通はなるんですけど、そうすると素の緊迫感が出づらいと思うんです。だから僕は自分が映ってなくても相手の役者に何かしらのプレッシャー与えたくて、ずーっと現場にいました(笑)」
堀部 : 「だからこちらとしてもまったく遠慮なく、『映んないですけどここにいてください』みたいなお願いをして、カメラとマイクのすきまから中腰になって相手の目だけ見てもらったりとか、なるべく窮屈に撮っていましたね」
内野 : 「そういう撮り方だと、予想もしなかった生な演技が出てくるんですよね」
堀部 : 「俳優がどんな現場に行ってもぶち当たることなんですけど、相手がいない状態でセリフを言うことになると、助監督が「ここ見て言ってください」って相手の顔の代わりに手で"グー"を作って出すんです。シリアスな芝居をしなきゃならない状況だったりすると、『それ"グー"じゃん……』ってなりますよね(笑)」
内野 : 「相手の瞳を見ながら芝居すると心の揺らぎが生じるけど、"グー"だとなかなか生じにくいですね(笑)。目の前に生の役者がいれば、生な芝居を見たいじゃないですか。そういう気持ちを大事にしてくれる現場でしたね」
俳優、そして放送作家の顔を持つ堀部監督ならではのこだわりが詰め込まれた今作。虚構と真実、コミカルとシリアスが入り乱れ、驚愕のラストへとなだれ込む痛快なエンタテイメント作品に仕上がっている。
なお、『悪夢のエレベーター』は、10月10日(土)より東京 シネセゾン渋谷ほかで、17日(土)より大阪 シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都 京都シネマ、神戸 シネ・リーブル神戸にて公開される。
『悪夢のエレベーター』ストーリー
深夜、小川(斎藤工)は急停止したエレベーターの中に閉じ込められる。そこには、刑務所帰りというチンピラ風の男(内野聖陽)、ジョギングに出かけようとしていたジャージ姿の男(モト冬樹)、何かを思い詰めたようなゴスロリ少女(佐津川愛美)が乗り合わせていた。助けを呼ぼうにも外と連絡が取れず、パニック状態になる一同はひょんなことから自分の秘密を暴露し合うことになるが…。