Moblinは、2007年にインテルが中心となりスタートし、2008年には第1世代の製品が出荷された。2008年にインテルがOpenedHandを買収、同社の持つClutter 3D UIをMoblinに標準搭載しMoblin v2とした。またこの年Netbookが出荷、一部のNetbookにMoblinが搭載された。今年になり、Moblin ProjectはLinux Foundationに移管されている。

Moblinプロジェクトの歩み。2007年にインテルがスタートさせたプロジェクトは、現在では、Linux Foundationに移管されている

インテルによれば、Moblinは「Intel Atomプロセッサ技術を使った端末に最適化されたLinux」。これは、MIDに止まらずNetbookや車載機器、組み込み機器までをカバーするものだという。

Moblinのコア部分は、大きく3つに分かれている。一番下にあるのはLinuxカーネルとデバイスドライバなどで、そのうえに「Appサービス」があり、さらにその上に「UIサービス」がある。アプリケーションやプラットフォーム固有のユーザーエクスペリエンスは、このUIサービスの上に構築される。

Moblinのソフトウェアアーキテクチャ。コア部分は、Linuxカーネル、Appサービス、UIサービスの3つの層からなっている

Appサービスは、通信、インターネット、メディア、グラフィックス、その他のサービスに分類され、各種のオープンソースプロジェクトの成果物を利用している。たとえば、グラフィックスには、X Window Systemが使われ、Bluetoothスタックは、BlueZ、レイアウトエンジンには、Mozilla Geckoなどである。

UIは、インテルが買収したOpenedHandのClutterをベースにした3D User Interface Libraryからなり、QtやGTK+もサポートされている。また、メディア再生やHTMLのレンダリング、物理シミュレーションなどの機能が含まれている。

電力制御については、MIDがバッテリ駆動機器であり、Atomプロセッサがモバイル向けであることから、強化されている部分だ。Moblinのカーネルではスケジューラーなどの割り込み間隔を長く設定してあり、プロセッサがより長い間、アイドル状態に止まれるようにしてある。また、アプリケーションが利用できるタイマーを2つ用意し、片方を正確なタイミングが必要な「クリティカル」、もう一方はそれほど正確さが必要のないものとし、後者に関しては割り込みタイミングをずらし、複数の割り込みをまとめて行うなどして、アイドル時間が長くなるようにしているという。また、プロセッサの状態やアイドル状態からの復帰原因などを調べる「PowerTop」というソフトウェアを提供している。

Moorestownでは、オーディオ再生用のアクセラレータなどが用意されるが、Moblinのメディア機能はこれを利用でき、低消費電力での音楽、ビデオ再生をサポートする。

Moblin自体は、現在では、主体がLinux Foundationに移管されているが、インテルはAtomプロセッサベースのマシンに最適となるように協力しているという。

最後に、次の次の世代となるMedfieldでは、クレジットカードサイズといわれるMoorstwonのマザーボードよりさらに小型化が可能になる。池井氏は、これにより現在の携帯電話のようなサイズの機器にも組み込みが可能となるとした。