--レノボのコンシューマPCの特徴はなんでしょうか。
コーハット ひとつは「伝統」ということになります。これをいえる数少ないPCベンダーの1社だといえます。レノボは、ThinkPadが長年に渡って投入しつづけてきた信頼性の高いPCの伝統を維持している。例えば、アクティブプロテクション・システムは当社が一番最初に開発したものであり、マグネシウムフレーム構造や、防滴に強いキーボードも、信頼性の実現を目指して最初に採用したものです。IdeaPadには、こうしたノウハウが生かされている。
また、ソフトウェアでもイノベーションがあります。ThinkPadでは、Password Managerによってパスワードを管理していますが、コンシューマPCではもっと簡単なやり方がいいだろうということで、今回のIdeaPadでは、ウェブカメラを使用した顔の認証システム「VeriFace」を採用した。データのリカバリーについても、他社のPCでは、出荷時の状態に戻してしまい、プログラムやデータを失うことになるが、レノボは、適切な状況にリカバリーできる。こうした機能にいち早く取り組んできたのがレノボの特徴です。レノボを選択した人の多くは、こうした点に魅力を感じていただいています。
--IdeaPadには、ThinkPadで採用されているトラックポイントが採用されていませんね。これはどうしてですか。
コーハット それは社外だけでなく、社内からも意見があります。コンシューマPC市場では、95%以上のユーザーがタッチパッドを使用しています。技術的な好みはあると思いますが、まずは最初に覚えた使い方に慣れるものです。そうした観点からタッチパッドのみとしました。同様に、光沢ディスプレイ以外のものも用意してほしいという声もあります。採用するかどうかはともかく、こうした声は次のモデルなどに反映していくことになります。
--残念ながら、コンシューマPC市場におけるレノボブランドの認知度はまだ低いですね。この点はどう捉えていますか。
コーハット 確かにそれは大きな課題だと感じています。秋葉原の量販店でも、様々なPCが陳列されていますが、レノボの存在感は極めて低い。やはり、知らないメーカーのPCは選択しませんから、コンシューマPC市場で成功すためには、認知度を高めることは最優先課題だといえます。また、見て格好いいと思ってもらえるデザインでなくてはならない。これも重要です。
レノボは、日本のコンシューマPC市場におけるシェアは0%ですから、これは見方を変えれば強みだといえる。これからは伸ばすしかないわけですから(笑)。ブランドや評価というのは、時間をかけて築かれるものです。たとえ、50億ドルをつぎ込んでも、ブランドは一夜で確立はできない。
もともとThinkPadの評価からも明らかなように、レノボのPCは、一度買ってもらうとその良さがわかってもらえる。キーボードの使用感ひとつをとっても、他社よりも優れていると自負しています。IdeaPadの良さが、リピーターを増やし、さらに口コミでユーザーを増やすといった形で広がっていけばと考えています。
--ただ、レノボになって、ThinkPadの良さの全てが引き継がれたわけではなかったような気がします。ブランドイメージは、ゼロから作り上げることになりますか。
コーハット レノボブランドについては、ブランドイメージをゼロから立ち上げていかなくてはならないという気持ちはあります。しかし、ThinkPadブランドに対するイメージはいまでも生きていますし、伝統もある。価値を認識している人も多い。
とはいえ、短絡的に、コンシューマPC領域にThinkPadブランドを持ってくるということは考えていません。レノボブランドと同時に、IdeaPadブランドを高めていかなくてはなりません。IdeaPadでは、Atomプロセッサを搭載したもの、NVIDIAのION搭載モデル、インテルの超低電圧CPU(CULV)搭載モデルのほか、Core 2 Duoを搭載したオールインワンのY550も用意した。
今後、市場シェアが伸びるにしたがって量販店店頭での展示台数も増やすことができるでしょう。これまでは3台しか展示できないものが、6台展示できるようになるというように市場展開の広がりとともに、ラインアップも強化していきたい。
--日本国内における、レノボのコンシューマPC事業の1年後のイメージはどういったものを描いていますか。
コーハット とにかく市場シェアを伸ばしたい。明確な数字は難しいが、急成長をさせたいと考えています。また、市場で数多くの製品ラインアップを展開できるようにしたい。さらに、ブランドの認知度を高めることも重要な取り組みです。
量販店店頭を訪れた人が、「私はレノボのPCが欲しい」、「レノボのPCであれば、どれでもいい」というようにいっていただけたら最高ですね。いまは残念ながらそういう状況ではない。レノボブランドだから、このPCを選ぶというような状況を作っていきたいと考えています。