レノボが、国内コンシューマPC市場に本格参入した。ノートPCの「IdeaPad」シリーズおよび液晶一体型デスクトップ「IdeaCentre」を投入。日本におけるシェア拡大に意欲を見せる。とくに、IdeaPadシリーズでは、2008年末に投入したネットブックの「IdeaPad S10e」が高い人気を誇った実績を背景に、Sシリーズに加え、軽量薄型ノートPCとなるUシリーズ、エンターテイメントノートPCのYシリーズを投入し、幅広いユーザー層の獲得を目指す。果たして、レノボは日本のコンシューマPC市場において、どの程度の勝算があるのか。来日した同社AmbassadorであるMatthew Kohut(コーハット)氏に話を聞いた。
--なぜ、いまレノボがコンシューマPC市場に本格参入することになったのですか。
コーハット ここ数年、レノボはPC市場におけるブランド確立に取り組んできました。オリンピックのスポンサード活動などを通じて、多くの人が「レノボって、聞いたことがあるな」という程度には認知度が高まってきた。これは継続的に行っていかなくてはならない取り組みですが、一方で、スケールメリットを活用する取り組みを開始する段階に入ってきたと捉えています。
PC業界で成功するためには、量を販売していることが必要です。全世界のPC市場を俯瞰すると、成長が著しいのは新興国市場です。とくに新興国市場においては、コンシューマPC分野が成長している。つまり、企業の成長のためには、新興市場のコンシューマ領域を意識した製品を強化する必要がある。
同時に先進国においても、コンシューマPC市場への展開を強化する。コンシューマPC市場への本格参入という点では、レノボは後発となります。後発企業というのは、他社よりも絶対に勝てるという自信がないと参入しないものです。レノボは、コンシューマPC市場で勝てると考えたからこそ、この市場に本格的に参入したわけです。
--勝算はどこにありますか。
コーハット ThinkPadで培った伝統を生かし、それをコンシューマPCの世界に生かすことができるのがレノボの強みです。コンシューマPCは、機能やデザイン、使い勝手など、様々な要素が絡み合ってデザインされます。そのため、多くの人の意見を聞く必要がある。これまで以上に持ち運びしやすいノートPCが欲しい、もっと目立つノートPCが欲しい、友人から「いいね」といわれるものが欲しいなどの声がある。そして、ThinkPadの黒い四角い筐体ではなく、スタリッシュなものが欲しいという声もある。それに向けた製品を開発していくというのが、レノボのコンシューマPC事業における姿勢です。
レノボの開発拠点は米国ノースキャロライナ州のラーレイ、日本の大和事業所、中国・北京にあります。それ以外にインドやハンガリーにも拠点を設置している。大和は法人向け、北京でコンシューマ向けという区分けはあるが、各国の開発拠点が協力して、デザインをする体制が整えています。また、日本では薄型、軽量のものが好まれるが、ドイツは堅牢なものが好まれるというように、国によって求められている製品が異なりますから、国ごとに仕様を変えたり、ラインアップを変えたり、好まれる色を用意したりといったことをしています。
すでに成果は出ています。昨年12月に発売したS10eは、今年初めから9週間連続で売り上げナンバーワンを維持している。また、ワールドワイドでは、NVIDIA IONを搭載したIdeaPad S12の投入を発表し、話題を集めている。ION搭載モデルは、日本ではまだ正式に発表していませんが、国内投入も前向きに検討しています。こうした製品群の投入によって、レノボは、今年後半にかけて、コンシューマPC市場において重要なポジションを占めることになるでしょう。
--今回のIdeaPadの新製品では、日本のユーザーの声はどのぐらい反映されているのでしょうか。
コーハット 日本のコンシューマユーザーの声にも耳を傾けたことは事実ですが、コンシューマPCのグローバル展開は初めての試みですから、まずは多くの人に受け入れられる仕様とした。ここで投入したものに対して、改めて声を聞き、第2弾、第3弾といった製品に反映していく考えです。すべての要求がわかっていたら、市場シェアは100%になりますから(笑)、時間をかけて改良を加えていきます。
今回の製品では、ThinkPadの良さはどこにあるのかを、また、ThinkPadが長年に渡り、高い評価を受けている要因はなにか、という点を再度検証し、IdeaPadの開発のなかに取り入れました。どの国にも共通しているのは、高い品質を実現した製品が欲しいということ、また、サービスはどうなのか、サポートはどうなのかといったことも気にしている。それに応えるために採用した一例が、ハードディスクを保護するためのアクティブプロテクションシステムの採用です。ThinkPadで高い評価を得ている仕組みを、IdeaPadシリーズにも採用した好例です。
日本のユーザーの目は厳しいですから、その点でも満足してもらう製品づくりを目指しました。なかでも、日本のユーザーの声を強く反映したといえるのが、タッチパッドの採用ですね。日本のユーザーは、携帯電話やマルチタッチを先進的に使っていますから、日本のユーザーのためには、この機能は必要だという議論がありました。