ベトナム中部に日本人ゆかりの町がある。1999年に世界遺産にも登録されたホイアンと呼ばれるこの町は、南シナ海に面しており、15~19世紀には、中国やインド、アラブなどを結ぶ交易都市として栄えていた。日本人町もあり、多い時には1,000人ほどがが生活していたという。その様子を今も残すホイアンに行った。
中国的な要素が強い日本人町
ホイアンまでは、ホーチミンからベトナム航空国内線でダナン空港に到着し、そこから約30km。古き街ホイアンを象徴するのが、来遠橋(らいおんばし)だ。1593年に日本人によって建造されたといわれ、ベトナムを代表する観光名所の1つとなっている。木造の橋だが、日本で見かけるようなシンプルなものではなく、かなり装飾が施されている。屋根付きで、橋内には寺院まであるのがユニークだ。この橋は「日本橋」とも呼ばれるそうだが、その姿はかなり中国的といえるだろう。
日本人町は、この来遠橋の西側にあったとも東側にあったともいわれているが、江戸時代の鎖国で衰退した後は中国人が多く住んだために、現存する古い町並みは日本よりも中国文化の影響を受けている。それでもやはりベトナムの町らしく、建物の色合いがカラフルな街中は見ているだけで楽しい。街の規模も、メインは1km四方ほどに集中しているので、歩いて回るのに最適だ。
観光地らしく、街のそこここでシクロ(ベトナム式三輪自転車タクシー)を見かける。建物を構えている店以外にも、路上では様々な物が売られていて賑やかだ。平カゴを下げている女性に売り物を見せてもらうと、炒ったピーナツ、砂糖掛けしたジンジャーとドライココナッツ、ヌガーといったおやつ類だった。ジンジャーとココナッツを購入して食べてみる。素朴な甘さが口中に広がり、ベトナムで飲まれているハス茶によく合いそうだ。
街中では、大きなカゴを下げている人もよく見かける。カゴの上に鍋などが載せられている。この道具で、小さな路上レストランが開かれるのだ。通りがかりにも、営業中の路上カフェがあり、人々がおしゃべりをしながらチェー(ベトナム風ぜんざい)などを食べて、ティータイムを過ごしていた。
ホイアン三大名物料理を食す
さて、ベトナム料理といえば、ベトナム中部の都市・フエの宮廷料理が有名だが、このホイアンもおいしいものが食べられる街として知られている。ホイアンに行ったならぜひ食べてもらいたいのが、ホイアンの三大名物料理である「ホワイト・ローズ」「揚げワンタン」「カオ・ラウ」の3品。すべて粉もの料理である。
これらは街のほとんどのレストランで食べられるそうだが、今回は日本にちなんだ店名の「SAKURA」に入ってみた。店内はベトナム風のエレガントな内装で、ところどころに飾ってある日本風の絵が調和しているおしゃれなレストランだ。店の女性が身に付けている淡いラベンダー色のアオザイも美しい。窓からは、小舟がトゥボン川を進む光景が見られ、ゆったりと落ち着いて食事が楽しめる。
3大名物が含まれたコースがあるというのでそれを注文した。まずは、「ホワイトローズ」。現地名は「バイン・バオ・バック」というが、皿に並べられた様子がバラの花のように見えることから、「ホワイト・ローズ」と呼ばれるようになったという。
エビのすり身を米粉でつくった皮で包み、蒸してある。薄い皮からエビのすり身がほんのり透けて見えるのが美しい。たくさんの干しエビがトッピングされており、香ばしさを加えている。プリッとしたエビにツルリと喉越しのよい皮。いくつでも食べられるとついつい手を伸ばしてしまう。