ロボットの馬力について考える

トークセッションの会場となったのはジュンク堂書店池袋本店4Fのカフェ。平日の開催ながら定員40人ほどのスペースはほぼ満席で、いかにもロボット好きそうなマニアの方々から、若い女性、親子連れまで、客層は意外とバラエティに富んでいた。

高橋氏と柳田氏が登場すると、客席から大きな拍手で迎えられ。アットホームな雰囲気の中でトークがスタート。「史上最強のロボット!」の紹介に続き、米「TIME」誌の「2004年の発明」に選ばれた高橋氏の代表作「クロイノ」のデモンストレーションもさっそく披露された。

「史上最強のロボット!」を手に語る柳田氏と高橋氏

高橋氏の代表作「クロイノ」のデモの様子。座った状態から自分で立ち上がって歩き出す。片足立ちを決めると客席から感嘆の声が

"クロイノ"の設計、電源などの話をきっかけに、話は特撮・アニメ作品の"馬力の強いロボット"の考察へ。柳田氏はまず、特撮最強の馬力を持つロボットとして、1998年放映の「電子戦隊メガレンジャー」に登場した「メガボイジャー」を紹介。身長70m、体重4万t、出力6,500万馬力という設定で、柳田氏によれば、仮に全力で垂直跳びしたとすると74mのジャンプができる計算になるとか。

柳田氏いわく「6,500万馬力というのもすごいが、その前に体重4万tというのが重過ぎなんですね。分かりやすくするために身長1.8mに縮めて考えると、体重は680kg。重く作ってしまったゆえにものすごい出力が必要になって、結果、身長を超えるぐらいのジャンプもできる訳ですね」とのこと。

電卓を駆使してリアルタイムに数値計算

資料の「電磁戦隊メガレンジャー超全集」を取り出し、「メガボイジャー」について語る柳田氏

ちなみに、「鉄腕アトム」は身長140cm、体重35kg、10万馬力で、ジャンプ力は800mとなる計算。「超時空要塞マクロス」に登場する「VF-1 バルキリー」は、身長12.68m、体重13.25t、出力65万kw(約88万仏馬力)。ジャンプ力は280mになる計算で、小型戦闘機ながら中型の原発ぐらいのパワーになるとか。マクロスがもたらした異星人のオーバーテクノロジー恐るべし……。

では、この夏、お台場に実物大モデルが登場して話題の「RX-78 ガンダム」はというと?

柳田氏(以下敬称略)「ガンダムは身長18m、体重45.4t、出力1380kw(約1880仏馬力)。ジャンプ力は2.3m。ちょうど人間の10倍ぐらいの身長なので、人間なら23cmしかジャンプできない感じ」

高橋氏(以下敬称略)「ガンダムが攻めてきたら、2~3mの塀を立てておけば飛び越えられない?(笑)」

柳田「胸と背中にあるガス噴射のスラスターで補助するのでは。もともと宇宙戦のためのモビルスーツで、ジャンプ力はわずかでも慣性の法則で飛んでいけるから、そんなに強い出力にする必要がなかったのかも。陸戦型ガンダムというのもあるので、そちらはもっと強いのかも知れないですね」

高橋「なるほど……なんだか深みにハマってしまいましたね(笑)。まぁそんな風に、フィクションのロボットはけっこう、エイやっと数字が決められている感じで、分析していくといろんな矛盾があって面白かったりするんですけど」

柳田「矛盾というか、10万馬力とかいうのは多分、とにかく自分たちの作るロボットには強くあって欲しい! という気持ちがあって、ちょっとあり過ぎかな、と思いながらもそういう数字にしてしまうんでしょうね」