8月6日、東京都港区のTHE GRAND HALLにおいて、Javaエンジニアを対象とした技術カンファレンス「JavaWorld Day 2009」(主催: IDGジャパン)が開催された。
9回目を迎えた今回のJavaWorld Dayでは、クラウド時代に求められるエンジニアのスキルや気構えから、JVM上で動作するマルチパラダイム言語「Scala」の特長まで、これからのJavaエンジニアに役立つノウハウ/技術を幅広く網羅したプログラムが組まれた。定員300人に対して500人近くの応募があり、午前中のセッションからIT技術の練磨に励むエンジニアで会場は満員となった。
本稿では、豆蔵 取締役CTO/豆蔵ソフト工学ラボ 所長の羽生田栄一氏による基調講演『システム開発は、今後どう変わっていくのか』の模様をお伝えしよう。
ソフトウェア事情の変化はますます激化!
羽生田氏の講演は、グラミンフォン(Grameenphone)と呼ばれる携帯電話の紹介から始まった。
グラミンフォンはバングラディッシュで生まれた携帯電話。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏らの意志に従い、1日2ドル未満の所得で生活する貧困層でも使用できるサービスとして提供されている。現在では、同国だけでなく、アジア全域やアフリカでも急速に広がっており、30億人にも上る貧困層の生活が激変。ビジネスが生まれ、経済が興っており、民主化が進む可能性が高いという。
羽生田氏は、このような大きな動きに触れた後、「この例に代表されるように、ITをとりまく環境は今、激変している」と続ける。
例えば、現代の家電や自動車、電子機器にはソフトウェアが当然のように組み込まれている。それら製品開発費に占めるソフトウェアの割合は、ハードウェアのそれを大きく超え、42.2%と最も高くなっている。携帯電話や自動車におけるプログラム行数は500万行以上に上り、障害原因のNo.1がソフトウェアの不具合という状況だ。
加えて、クラウドコンピューティングなどの新たな技術も登場している。これらの普及が進むにつれ、経営や開発の形態も変わっていくと考えられる。さらに、システムは依然として大規模/複雑化の一途をたどっており、プロジェクトに関わるステークホルダーの人数も一昔前に比べて飛躍的に増加している。
以上のように目まぐるしく変わる状況の中でソフトウェア開発を成功させるには、「エンジニアも考え方を変えなければならない」と羽生田氏は主張する。特に、「ビジネスやステークホルダーに対する考慮が今まで以上に必要になる」と言い、プロジェクトを主導する立場にあるITアーキテクトやITエンジニアには、ソフトウェアの開発スキルのみならず、コンサルタントやプロジェクトマネージャ、ファシリテータとしてのスキルも磨いていくべきとの見解を示した。