撮影機能は大幅改良と無変化が同居する。まず大きく変わった点から見ていこう。ひとつ目はレンズの大口径化だ。従来機の5.9mm F2.4(35mm判換算28mm)に対し、GR DIGITAL IIIは6.0mm F1.9(35mm判換算28mm)を搭載。画角はGRシリーズの伝統ともいえる28mmをキープし、F1.9という明るいレンズに仕上げている。一般に大口径レンズは大きなボケ味を楽しめるが、GR DIGITAL IIIは広角モデルでパンフォーカスになるため、開放撮影でもたいしてボケ味は期待できない。大口径化の目的は、高画質で撮れるチャンスを広げる点にある。

リコーは新レンズを「FAST GR LENS」と呼んでおり、これが大口径化の目的を象徴している。最近でこそ「大口径=ボケ味」という見方が定着しているが、そもそもレンズの大口径化は暗いシーンでシャッタースピードを稼ぐことが目的だった。大口径レンズはより多くの光を取り込むことができ、開放時は暗所でも速いシャッタースピードで撮影できる。ストロボを使ったり、ISO感度を上げなくても、手持ちで暗所撮影できるわけだ。見方を変えると、ある種の手ブレ補正機能と考えられるだろう。画像処理エンジンは「GRエンジンIII」に進化し、解像度と彩度を保持したままノイズ低減できるようになった。また、RAW撮影は最大5枚まで連続撮影に対応している。

焦点距離が5.9mmから6mmに変わっているが、画角的に大きな変化はない。開放F1.9とはいえ広角レンズなので、ボケ味を楽しむというよりは、従来モデルと比べ暗所で感度をあげる量が少なくてすむのがメリットとなる

次に変わらない部分。これは画素数だ。従来機同等の約1000万画素である。これまで新型デジタルカメラといえば画素数アップが当然であり、画素数据え置きの機種はレアケースといえる。ただし、コストダウンのために従来機のCCDを使いまわししているということではない。GR DIGITAL IIIでは高感度タイプのCCDを採用し、CCDサイズも従来の1/1.75型から1/1.7型に若干サイズアップ。つまり、リコーはあえて1000万画素にこだわったわけだ。GR DIGITAL IIIの発表会場にて、リコー パーソナルマルチメディアカンパニー プレジデント 湯浅一弘氏は、「高画素すなわち高画質ではない」と力説し、高感度タイプ1000万画素CCD採用の理由を語っていた。新レンズ、新画像処理エンジンを組み合わせる上で、高感度タイプの1000万画素CCDが理想的な選択だったのだろう。「画素数よりも画質を選ぶ」というリコーのチャレンジである。…つづきを読む