2009年7月22日、今世紀最長の皆既日食。奄美大島はトカラ列島ほど皆既時間が長くはないものの、トカラに比べ訪れやすいこともあり、いくつもの旅行会社が皆既日食ツアーを催行した。今回、筆者はそのツアーのひとつに参加。興奮の日から早10日たったが、改めて21世紀最大の皆既日食に胸を膨らませた1日を振り返る。

鹿児島から11時間の船旅で名瀬に到着

皆既日食本番に先立つ7月21日、午前8時半。鹿児島の繁華街・天文館から歩いて10分ほどのドルフィンポート「日食館」前に、奄美大島皆既日食ツアーの参加者が三々五々集まり始めた。顔ぶれは、大きな機材を持った"日食ハンター"の人たちから、小さな子どもを連れた家族、数名のグループ、男女カップル、そして単独参加の人まで実に多彩。1人でやってきた女性の姿も何人か見かけた。

集合時間の9時を迎え、参加者は7、8台の大型バスに分乗して、奄美・沖縄航路発着の鹿児島新港に向かった。受け付けを済ませて順次乗船開始。そして午前11時、およそ400人を乗せたフェリー「クイーンコーラル8」は鹿児島を出航した。

ドルフィンポートに設けられた臨時施設「鹿児島日食館」の前がツアーの集合場所。集合時間の30分以上前から多くの人が集まり始めていた

鹿児島~那覇に定期航路を持つマリックスラインのフェリー「クイーンコーラル8」。鹿児島を出て奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島、沖縄本島の本部に寄港し、那覇に向かう

雄大な桜島を背中に見ながら錦江湾を南下。右に開聞岳と薩摩半島、左に大隈半島の間を抜け、外洋へ出る。午後3時頃に屋久島の脇を通過。夕方から夜の早い時間にかけてはトカラ列島の東を航行し、深夜10時、奄美大島・名瀬港に接岸した。同ツアーの体育館宿泊コースとテント宿泊コース会場・太陽が丘総合運動公園は、名瀬とは島の反対側にあたる東海岸にある。11時間の船旅で疲れた客たちは、名瀬からさらに50分、バスに揺られることとなった。

出航前、デッキ最後部から桜島の姿を間近に望む。この日、桜島は頂上付近が雲に覆われていた。鹿児島を出てしばらくは桜島を左舷に眺めながら錦江湾を進む

今回の皆既日食において、皆既時間が有人地域最長ということで一躍名を知られたトカラ列島の悪石島近海を通過。翌日の悪天候を予測するかのような不気味で分厚い雲が、島全体を包んでいた

太陽が丘総合運動公園に到着したとき、時計の針はもう午後11時。体育館は消灯時間が過ぎ、前日までに到着している参加者たちが寝静まっている。簡易ベッドひとつと、その横にパイプ椅子ひとつを置いた範囲が1人当たりのスペース。案外広いとほっとした。僕は荷物整理をしてから、夜の公園内を散歩。暗い夜空を見上げると、雲の合間に星が見えていた。わずか半日後の"その時間"に晴れてくれることを、ココロから祈った。