――一番難しかったのは何でしょうか。
上田さん「麦芽100%だとどうしても渋み、雑味が増えてしまいがちです。しかし私たちはすっきりとした爽やか感をキープしつつ、旨みだけをさらに付加しようと考えました。これが実現できたのは弊社の技術力があってこそです」
田代さん「麦芽100%にするということを全国の統括本部など20カ所以上まわって関係者の方々に説明しましたが、皆さんが驚きの声を上げました。『麦芽100%にして一番搾りらしさが実現できるのか』と思われたのも無理はありません。ですから、『新・一番搾り』を飲んだ時はその味わいに驚きつつ、『これなら売れる』と頷いていただいたのを覚えています」
――パッケージデザインも変わりましたね。
上田さん「全体的にカジュアルにしました。ベースを明るいクリーム色にし、文字はゴシックになりました。一番搾り麦汁をアイコン化したしずくマークも入っています」
――イチロー選手と松嶋菜々子さんのCM起用が印象的でした。
田代さん「イチロー選手の撮影に立ち会いましたが、とてもきさくで、エキストラの方に話しかけて現場を盛り上げているのが印象的でした。忙しい中での進行でしたが、おかげさまで明るい雰囲気で撮影が終了しました。最後には『一番搾りをシアトルまで取り寄せたい』とおっしゃって、名残惜しそうでした」
リニューアルにより、ファン層の拡大も
今回のリニューアルは、これまでの「一番搾り」ファン以外の層にも受けているという。リニューアル前の時期を含む1月~3月の販売数量は+1.7%であるのに対して、3月~5月と前年同時期を比較すると、約1割増の大増幅となっているのだ。これを受け、5月30日からは「一番搾り」の新テレビCMがスタート。「きてます!! 麦芽100%篇」として松嶋菜々子さんが引き続き登場した。
一番搾り麦汁のみという贅沢な製法で支持されてきた「一番搾り」が、原材料にさらにこだわったビールとして生まれ変わった。キリンビール社内では、「新・一番搾りをプレミアムビールとして発売するべきではないか」という声もあったという。しかし今まで通り多くの消費者に飲んでもらいたいという考えから、価格据え置きで販売されることとなった。
今回のインタビューで印象的だった言葉がある。上田さんの「うちはビール会社です。だからビールが売れると素直に嬉しい。社員が元気になるんですよ」というコメントだ。「原点はビール造りにある」という気概が強く反映された言葉のように思う。
2007年に創立100周年を迎え、新たな100年の歩みを始めたキリンビール。今年も「一番搾り」をはじめとした様々な商品が、私たちの食卓を明るくしてくれそうだ。