隠されたアイテムを見つけていくだけだと単純な宝探しになってしまうが、このリアル脱出ゲームでは謎解きや演出に多くの独創的なアイデアが盛り込まれており、ゲームの展開を最後までスリリングなものにしている。
コンピューターゲームの場合、「2つのアイテムが揃うと別のアイテムに変わる」といったイベントも、画面上の出来事なので簡単に実現できるが、現実世界ではそうはいかない。このため、今回のリアル脱出ゲームでは部屋の一角にバスケットを用意し、この中にアイテムを入れると、条件が揃っていれば壁の向こう側にいるスタッフが手を伸ばして別のアイテムに交換してくれるシステムとなっている。
また、ゲームが一定の段階まで進行すると室内の壁面に映像が表示され、この映像に対して何らかのアクションを起こしていくことも謎解きのひとつに加わっていく。映像に変化が生じる場面では、ピコピコとしたいわゆる"ファミコンサウンド"の効果音も加えられており、まさにゲームの世界に入り込んでいるという気分を高めてくれる。
ひとつひとつの謎解きはそれほど難しくないものの、さまざまなアイテムやヒントが複雑に関係しながら脱出に向かっていくので、一度体験しただけではゲーム内に用意された楽しみのすべてを把握しきれないほど。実際に前半30分ほどの間、各参加者はゲームの全体像をあまり意識することなくバラバラに行動しており、「こんな状態から、脱出というひとつのゴールにたどり着くことができるのか?」と不安に感じられた。
警備員が守っていた箱がようやく開いた。白い緩衝材をかき出して中身を確かめるが、部屋を開ける鍵ではなかった |
ちなみに、最後のほうになってこのような指示が出され、残り時間がわずかな中で散らかした緩衝材を大あわてで箱に戻すことになる |
しかし後半になると、前述のように自然と役割が分担されていき、「○○を試してみよう」「まだこのアイテム使ってないよ」といった具合にアイデアや情報を共有し合い、お互い見ず知らずの間柄であるにもかかわらず、固い協力体制が築かれていく様子が興味深かった。人間は極限状態におかれるとどんな野蛮なことを仕出かすか分からない、などと言われるが、全員が同じ目的を共有している状況下なら、案外うまくやっていけるのかもしれないと感じた。