100以上の国と地域において5つの言語でリリースされたWindows 7ベータ版では、世界中のユーザーからのバグ報告が得られた。Windows 7の改善にあたって、これらのバグ報告は頼みの綱であり、何が問題かを見極めるためにバグ報告を読み解くことに多くの時間を割いている。これらのバグ報告はありとあらゆる言語で寄せられるため、できるだけ迅速にフィードバックの内容を理解する必要がある。しかし、これはかなり難しい作業だ。

以前は、英語以外の言語で書かれたバグ報告は逐一チェックされた後にひとつひとつ翻訳され、問題があるコンポーネントを担当する開発チームに引き渡すという人海戦術が採られていた。このやり方は時間がかかる上にミスが発生しやすいため、Windows 7ベータ版のような大規模かつ広範囲に及ぶ試験には不適格だ。最悪のパターンでは、製品版に影響する貴重なフィードバックが見逃され、サービスパックや次期バージョンにまで先送りされてしまう可能性もある。

Windows 7では、拡張言語サービスに搭載されている言語検出APIを利用することにより、ユーザーがどの言語のバグを報告しているのかを自動的に判別している。Windows 7から搭載された拡張言語サービスは、開発者がOS上で言語に関する高度な機能を実装したい場合にUnicodeテキストの言語や書体の判別、翻訳などの機能が利用できるというものだ。これらのWindows 7の機能や今後実装される機能を利用するにあたり、開発者はたったひとつのインタフェースを学ぶだけでいい。Windows 7では、100を越える言語を判別する機能がアプリケーション開発者に提供されるが、我々もこの機能を全世界から発信されたWindows 7ベータ版のフィードバックの選別と取り回しに利用できることを喜ばしく思っている。

言語を特定した後、オンライン翻訳サービス「Live Translator」を使って英語への機械翻訳を行い、フィードバックに何が書かれているかを大まかに把握する。最後に機能ごとに分別されたフィードバックのデータベースを検索する。この作業では、ユーザーから寄せられるフィードバックによって、問題が出そうな他言語アプリケーションをあらかじめチェックできる。機械翻訳では完全な訳文は得られないものの、どの問題がさらなる検証を必要とするかぐらいは判断できる。これにより、以前よりもさらに多くのユーザーの声を聞きながらもより迅速に対応ができるようになり、Windows 7のさらなる質の向上が実現した。

なお、Windows 7のベータテストの終了までに35,408件のフィードバックがこのやり方で処理された。

すべての要素を盛り込むには

グローバライズとローカライズの質を向上させるための取り組みは、10月のWindows 7英語版の発売日から2週間以内にすべての言語版がリリースされるという結果に結びついた。2009年10月にリリースされるのは、アラビア語、ブルガリア語、中国語(香港)、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、クロアチア語、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、ヘブライ語、ハンガリー語、イタリア語、日本語、韓国語、ラトビア語、リトアニア語、ノルウェー語、ポーランド語、ポルトガル語(ブラジル)、ポルトガル語(ポルトガル)、ルーマニア語、ロシア語、セルビア語(ラテン)、スロバキア語、スロベニア語、スペイン語、スウェーデン語、タイ語、トルコ語、そしてウクライナ語の36言語だ。

これらの36言語に加え、全世界の政府機関や学術機関、言語の専門家が提唱するプログラム「Local Language Program」(LLP)の一環として、すべてのWindows 7のエディションで利用できる、その他の言語用のLanguage Interface Pack(LIP)パッケージがダウンロード提供される予定だ。LIPパッケージは、量産版となるRTM版の完成と共に開発が開始され、パートナー企業が計画したスケジュールに従って作業が進められることとなる。10月のWindows 7発売時点では、カタルニャ語とヒンディー語の2つのLIPパッケージがダウンロード可能で、その他のLIPパッケージも数カ月程度でリリースされるだろう。36の言語版と2つのLIPパッケージを合わせた38言語に対応したOSをこれほどまでの短期間でリリースできることを喜ばしく思うとともに、今後のバージョンアップではさらなる質の向上を期待してほしい。我々がある程度の信頼性を持つリリーススケジュールを示せたことによって、関係各社もより計画を立てやすくなったのではないかと思う。

拡張言語サービスをはじめとするWindows 7の新機能についての情報はオンラインのMSDNで提供され、Windows 7向けのSDKのダウンロードや新機能の紹介ドキュメントが閲覧できる。また、MSDNの「Go Global Developer Center」では、多言語化にあたって使われている技術の詳細な情報が入手可能だ。