Silverlight 3
その後、ガスリー氏は先日リリースされたSilverlight 3に加え、開発ツールの「Silverlight 3 Tools 日本語版」を同日(7月16日)より提供することを発表した。デザイナ向けのExpression Blend 3と、次期バージョンの目玉機能であるSketchFlowのRCも公開されている。Expresion Studio 3 日本語版は9月提供予定だ。
ここで、マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部UXテクノロジー推進部の春日井良隆氏にバトンが渡された。春日井氏は、初めにSilverlight 3の新機能を紹介した。
重要な新機能の1つはメディア関連の機能向上だ。新しいコーデックのサポートによってWindows Mediaに加えてH.264/ AAC/ MPEG-4 の再生が可能となる。加えてRawビットストリームAPIの提供によって、独自フォーマットの動画を再生するコーデックを開発できるようになる。動画の再生にはGPUアクセラレーションが有効になるため、GPUを搭載するPCで実行した場合はCPUの負荷を大幅に軽減できる。メディア分析のロギングも改善され、利用者がメディアに対して行った操作を記録できるようにもなる。
続いてSmooth Streamingによる遅延のないメディアの再生についてデモンストレーションが行われた。キーノートそのものをライブ中継して、Silverlightで再生するというものだ。通常、ストリーミング中のメディアをシークするとバッファリングのために数秒待たされることになるが、Smooth Streamingによる動画配信ではシークしてもバッファリング時間がほとんど発生しない。ローカル上のメディアを再生しているような、スムーズな再生が可能だ。加えて、ライブ中でもシークして過去の映像にさかのぼることができる。
ちなみに、キーノートのライブ中継については、午後のブレイクアウトセッション「Silverlight3 によるメディア配信 - HD 配信、最新ストリーミング、DRM」で、マイクロソフトの大西彰氏、奥主洋氏両名から詳細が語られた。ReMIX Tokyo 09の公式ページからセッション資料をダウンロードできるので、興味があれば目を通しておくとよいだろう。なお、ライブ中継されたキーノートの映像は、後日オンデマンドでも配信される予定だ。
次にRIA関連の新機能が紹介された。遠近法によって疑似的に3Dのような演出を実現するPerspective Transformsや、プログラムからイメージの動的な生成を可能にするビットマップ API、ぼかし効果やドロップシャドウなどのエフェクト、パフォーマンスの改善などだ。特に演出面でHLSLを用いてピクセルシェーダを記述して独自のエフェクトを開発できるようになったことは大きな前進と言える。Webゲームでの本格的な利用にも弾みがつくだろう。
アクセシビリティの向上という点では、OSが持つシステムカラーとSilverlightの同期が可能になるほか、音声読み上げなどにも対応する。ブラウザの外でSilverlightを使えるOut of Browserという機能も追加される。ブラウザを起動することなく、デスクトップから直接Silverlightアプリケーションを起動できる。
これらSilverlight 3の新機能を使った具体的な事例として、立て続けにヤフーとSBI Liquidity Marketによるデモンストレーションが行われた。
ヤフーは、ツールバーと連動するオークションツールを紹介。アプリケーションはOut of Browserで動作し、オークション情報へのアクセスが容易になっている。また、自分が持っている商品の管理など、通信の必要がない一部の機能はオフラインでも利用可能だ。
Silverlightは、Enterprise RIAでも注目されている。SBI Liquidity Marketは、FX業者間の競争の激化や、FX規制によるサービスの横並びの危機感から開発に取り掛かり、日本の金融業界で初のSilvelrightによるFXチャートシステムを実現したという。チャートやテクニカルの追加が遅延なくスムーズに行え、複数の銘柄を並べて表示できる。リアルタイムでデータを追跡でき、素早い意思決定に役立てそうだ。