これまで、開発コード「Shiretoko」として開発が行われてきたFirefoxが、日本でも7月1日よりダウンロード可能となった。これまでのバージョンは3.0であり、".5"ではあるが、1年ぶりのメジャーバージョンアップとなる。本稿では、新機能を中心にFirefox 3.5の紹介をする。

Firefox 3.5の新機能の概要

Firefox 3.5の新機能でまず注目したいのが、HTMLレンダリングエンジンにGecko 1.9.1を採用したことであろう。レンダリングエンジンは、実際にHTMLなどで記述されたWebページのテキストデータなどを画面に表示するための役割を担う。これにはいくつかの種類があり、Internet ExplorerではTrident、Google ChromeではWebKitといったレンダリングエンジンが採用されている。他にも、

  • HTML 5.0、CSS 3などのWeb標準に対応
  • 新JavaScriptエンジンにTraceMonkeyを採用
  • 履歴を一切残さないプライベートブラウジング機能
  • 位置情報通知機能
  • タブやセッション機能の改良

などの点が新機能として挙げられる。最新のWeb標準に対応した点では、<video><audio>タグがサポートされた。これにより、Ogg Theora形式の動画、Ogg Vorbis形式音声などのマルチメディアコンテンツの利用がネイティブで可能となる。CSS 3ではフォント機能、カラーマネジメント機能などが使えるようになる。

まずはインストール

では、早速、Firefox 3.5をインストールしてみよう。ちなみに、Windows、Mac OS X、Linuxのバイナリパッケージが提供される。さらに言語についても70以上がサポートされている。

図1 Mozilla JapanのページからFirefox 3.5をダウンロード

図1のMozilla Japanのページから、Firefox 3.5をダウンロードする。ダウンロードしたFirefox Setup 3.5.exeをダブルクリックすることで、インストールが開始される。

図2 Firefox 3.5のインストール

インストール手順は、特に難しいことはない。デフォルトの選択肢を選ぶことで問題はないであろう。

図3 Firefox 3.5

ルック&フィールは、これまでの3.0と比較しても、大きな変更は感じられない。せいぜいわかるのは、最初からタブが表示されている点くらいだ。

どこまで速くなったのか?

さて、筆者がもっとも気になるところのひとつが「速さ」。レンダリングエンジンにGecko 1.9.1を採用、JITコンパイラ搭載の高速JavaScriptエンジンTraceMonkeyを搭載したことで、どの程度の高速化が達成されたのか?まずはこれを見てみたい。なお、Mozilla Foundationによると、ベンチマークでは、対Firefox 3で2倍以上、対Firefox 2で10倍以上という発表がなされている。

ここでは、SunSpiderベンチマークを行ってみた。SunSpiderベンチマークは、JavaScriptエンジンのレンダリングの実行速度を測定するもので、3Dレイトレーシング、暗号処理、文字列処理などの26項目のテストを行い、その結果を表示する。

表示された数値はミリ秒単位で、数値が低いほど高速となる。純粋にJavaScriptエンジンの性能評価を行うことができるベンチマークである。なお、このベンチマークについては、Webブラウザの総合的な速さを判定するものではないという見方も当然できる。回線状態などの影響も大きく、JavaScriptの実行速度だけがWebブラウザの性能ではないというがその根拠になる。

しかし、最近のWebサイトでは、JavaScriptを多用したWebサイトが多く、概してそのようなWebサイトでは、「重い」、「遅い」と感じることが少なくないのも事実だろう。計測に用いた環境は以下のとおり。

  • CPU Intel Core 2 Duo E6600(2.4GHz)
  • メモリ DDR2 PC2 6400 4GB(実質2.8GB)
  • HDD Serial ATA接続:80GB(起動用)、500GB(データ作業用)
  • マザーボード ASUSTek P5B-VM
  • OS Windows Vista SP1
  • NVIDIA GeForce 9800 GT

まずは、Firefox 3.0での結果である。

図4 Firefox 3.0のSunSpiderの実行結果

ついで、Firefox 3.5である。

図5 Firefox 3.5のSunSpiderの実行結果

結果は、3.0が3899.2ms、3.5が1538.4msとなり、Mozilla Foundationが発表した2.4倍という数字以上の結果が得られた。実際に、JavaScriptを多用するWebサイトを閲覧してみると、体感でも速さを実感することができた。

アドオンはこれから

さて、これまでもFirefoxを利用してきたユーザーならば気になることがある。それは、アドオンの対応である。Firefox 3.5では、十二分なベータテストを行ってきた。その間にアドオンの多くも3.5対応をすませたものも多い。しかし、3.5には未対応のアドオンもまだまだ存在する。この点については、今後に期待という部分であろう。

図6 Firefoxのアドオン、緑のボタンが表示されないアドオンは3.5に未対応

本稿では、レンダリングエンジン性能など見てきたが、また機会あれば、Firefox 3.5の新機能を紹介したいと思う。