8月にUsenix Security Symposiumにおいて、MicrosoftのSystems and NetworkingグループがGazelleに関する講演を行う。これが一部で話題になり始めたのが6月末だ。Googleの唐突なChrome OS発表は、広く一般に対してブラウザOSにおける先手を印象づけるためではないかと勘ぐりたくなるようなタイミングである。

だが、過去の例を考えるとパイを広げるのがGoogleのChrome OS提供の狙いと考えるのが順当だろう。たとえばAndroidの登場によってiPhoneコミュニティとのつぶし合いが展開されているかというと、相互に刺激を受けながらモバイルアプリ開発は広がりを見せている。

参入の敷居を低くし、競争を発展につなげるのがGoogleのやり方だ。ただし、Googleのいう発展とは"Webの発展"である。同社はWeb利用から収益を上げる企業であり、Webの発展につなげることが全ての基本戦略だ。Chrome OSを搭載したミニノートが普及しても同社の売上げにはならない。それでもChrome OSを推進するのは、ブラウザOSがWebプラットフォームの前進につながるからだ。

GazelleはMicrosoft内のリサーチ・プロジェクトの1つに過ぎない。今はコンセプトを示す段階であり、同プロジェクトが製品につながる可能性は、まだまだ低い。GoogleがGazelleを意識しているかは分からないが、今後Microsoft内でGazelleのようなプロジェクトの存在が大きくなれば、結果的にGoogleにも利益がもたらされる。極端な話をすると、たとえChrome OSが伸び悩んだとしても、その存在に刺激を受けてMicrosoftがGazelleのようなプロジェクトに本腰を入れ始めてWebが前進すれば、それはGoogleの勝利といえる。

このように考えると、Gazelleプロジェクトを表舞台に呼び出すために、このタイミングでGoogleはChrome OSを発表したのではないか……とも思えてくる。