トイカメラ文化を牽引した「ホルガ」

1970年代にDianaが生産中止となった以降、トイカメラ文化を牽引したのは1982年に中国で生産が開始された120mm中判プラスチックカメラの「ホルガ」だ。当時、プロ趣向とされていた中判写真は高価であったため、安価な同カメラは写真を学ぶ学生などに広く支持されたという。同カメラの持つ特徴は、プラスチック製レンズ特有のソフトフォーカスとトンネルエフェクト、多重露光機能。また、レンズの精度が不安定であったり、裏蓋からの光漏れが起こりやすいなど、数多くの欠陥を抱えていたことも特徴なのだそう。露出過度な光が写真を横切って現れてしまうなど、撮影時にエラーが発生することが多かったようだ。しかしながら、「エラーの多さや写真の仕上がりのランダムさがかえって面白い」と、ユーザーからは長所として受け入れられているという。

ロモグラフィーの「ホルガ」。価格は9,240円

同カメラは、日本では2005年よりロモグラフィーにより販売されている。カラーも多くのバリエーションが販売されるようになり、いかにもトイらしいカラフルなものなど、見た目にも楽しむことが出来る。光漏れが起るなどの本体の不安定さは、現在もわざと残されており、「ユーザーの方々は、遮光テープを貼ったりして自分で光漏れ具合を調整するなど、エラーを楽しんでいるようですね」。

本格アナログ・コンパクトカメラの登場

また1982年には、現在では「ロモグラフィー現象」と呼ばれる強いロモ製カメラへの支持を生み出したコンパクトカメラ「LC-A」(自動露出の35mm判)が誕生。同カメラは、日本製のカメラ「Cosina CX-2」にインスピレーションを得て作られたものなのだそう。「LC-A当時のアナログカメラの機能を詰め込み、高性能カメラを小さなサイズで実現することを目的に開発されました」というこのカメラ、絞りの自動設定など、当時のカメラとしては先進的な機能を備えていたという。「"トイカメラ"とは一線を隔す、本格的な"アナログコンパクトカメラ"といえます」。1984年に大量生産が開始され、「ロシア内外で熱狂的な人気となりました。また、ウィーンの前衛芸術家などが率先してLC-Aを使うようになり、愛好団体なども設立されました」。現在では、世界各国にロモの愛好者団体が存在するという。

25周年を迎えた「LC-A」

絶大な人気を博したLC-Aだが、その生産は1994年に中止になったという。理由は、「ロシアの経済状況の悪化等」とのこと。しかし、LC-Aにこだわり続けた愛好者たちが設立したファンクラブ等が生産を支援することにより、1997年に生産が再開。LC-Aの製造は、2005年まで継続された。その後、工場がハイテク化され、手作業で生産されていたLC-Aの製造が難しくなったため、再び生産は中止されてしまったという。「しかし、LC-Aの愛好者や関係者たちが、生産が可能となる方法を模索し、2006年、オリジナルに改良を加えた『LC-A+』として、復活させることができました」。LC-Aは大量生産が開始されてから今年で25周年を向かえ、「LC-A 25 Year Anniversary」と称して、6月には世界各国でワークショップなどが開催されたという。

LC-A+(2006年 復刻版)。価格は31,500円

復刻されたLC-A+では、ロモの魅力である柔らかな色彩やトンネル効果を生み出すMinitar1 32/2.8レンズを再現。オリジナル同様のオート露出と長時間露光機能を備えている。さらに、新しい機能として、1枚の写真を撮影後にMXスイッチを入れるだけで、同じフレームにいくつもの時を刻み込める"多重露光(MX)スイッチ"が加えられているとのこと。