夏本番を直前に、「今年の夏は、シャキっと過ごしたい! 」「夏バテをどうにかして防ぎたい」と決意している方はいないだろうか。そんな方に耳寄りなのが、野球のイチロー選手が続けていることでも話題になった「朝カレー」だ。カレーのスパイスが健康な身体を保ち、夏バテ予防にもいいという。その理由を「朝カレー」の提唱者でもある日本薬科大学教授の丁 宗鐵氏に伺った。
プロフィール 丁 宗鐵(てい むねてつ)氏
医学博士・日本薬科大学教授
1976年横浜市立大学医学部大学院終了。同年北里研究所入所。1979年北里研究所東洋医学総合研究所医長。この間、1981年まで米国スローン・ケタリング記念癌研究所に留学。1982年北里研究所東洋医学総合研究所基礎研究部部長。1986年同研究所研究部門長、1996年東京大学大学院医学系研究科生体防御機能学講座助教授、2004年日本薬科大学教授、2005年東京女子医科大学特任教授などを歴任。日本東洋医学会専門医・指導医、和漢医学学会理事、東亜医学協会理事、日本未病システム学会理事。主な著書は『医者のいらない暮らしがしたい』(ゴルフダイジェスト社)『「カレーを食べる」と病気はよくなる』(マキノ出版)『正座と日本人』(講談社)、『病気にならない朝カレー生活』(中経出版)など多数
「カレーはもともとインドで健康食として作られたもの。様々な効能のあるスパイスを組み合わせることで脳の血流量を増進させ、集中力や計算力がアップさせることや、体温が上がることで免疫力が高まり、風邪をひきにくくさせるなどの効果があります」。
スパイスは、体の感覚が活性化され、脳だけでなく目の働きもよくなることが判明しているという。さらに、カレーでは肉や温野菜などをバランスよく採ることができる。「スパイスには味付け、食欲増進、香り、食材のにおい消し、色づけの5つの役割があり、たとえば辛味付けでも唐辛子のような痛み刺激ではなく、舌の味蕾(みらい)を開いて味に対する感受性を高めてくれます」。
1日のなかで、"朝のカレー"がいい理由は、「朝は自律神経がいちばん大きく切り替わるとき」だからだ。「睡眠中に副交感神経優位に替わっていた体が、朝食にカレーを食べることで、スムーズに交換神経に切り替わります。朝から集中力を高められるだけでなく、1日をラクに過ごすことができるのです」。
スパイスには代謝をあげることに加え、少量なら食欲を増進させるが、ある程度の量を使うと逆に食欲を抑える働きがあるという。「代謝がよくなるとダイエットにいいだけでなく、メタボリックシンドロームや成人病予防にも効果的です。また、体が活性化されるので、日々の行動にも影響します。たとえば仕事の電話ひとつ取るだけでも、代謝がいい人は素早く反応してきびきびと受話器を取れます。一方、受話器を取るにもなんとなくのろのろと緩慢な動きをしたり、声が小さくてボソボソと聞き取りにくいような人は、代謝が落ちている場合が多いですね」。