日本AMDは6月30日、オーバークロック専用とされるCPU「Phenom II X4 42 Black Edition TWKR」(以下 TWKR)を公開した。同社が「CPUのF1」と呼ぶCPUであり、F1カーが市販化されないことと同様、TWKRも非売品とされている。ただ、狭き門とはいえ入手の方法は用意されている。後日開催されるOCイベントの賞品として提供される予定だ。

CPUのF1こと「AMD Phenom II X4 42 Black Edition TWKR」。プロのオーバークロッカーによって記録を更新していくためのCPUだ

TWKRの意味は「Tweaker」。エンジニアリングサンプルからオーバークロック耐性の高い個体を選別したものであり、現在販売されているPhenom II X4 955 Black Editionを超えるオーバークロックを狙うユーザーに、"試して"もらうためのものとされている。日本AMDの土居健太郎氏によれば、正確な数は不明ながら、個体数は「おそらく世界で100個弱程度では」とのこと。日本には7個が存在しているそうで、既に日本AMDおよびオーバークロックに特化したPCショップ「OVERCLOCK WORKS」でテストが実施されている。

土居氏によれば「Phenom II X4 42 Black Edition TWKR」は世界に100個弱ほど。既に「生産完了で増産計画も無い」とのこと

Phenom II X4 42 Black Edition TWKRの42は、4コア/2GHz駆動を意味するとされる。初期設定では2GHz駆動となるが、倍率やHTリンク速度などに制限は無い。CPU上の刻印も独特で、AMD CPUのヒートスプレッダには、OPNなどが刻印されているのが普通だが、TWKRに関しては製品名と「Not for Sale」の文字のみと簡素だ。

製品名とNot for Saleのみ刻印されたTWKR

実際にTWKRを試したOVERCLOCK WORKSの渡辺氏によれば、Phenom II X4 955 Black Editionと比べ、TWKRは4コア全てが6GHzを超える率が高いと言う。実際に国内の7個のTWKR全てで6GHz動作を確認しているとのこと。また、6GHz駆動時のコア電圧もPhenom II X4 955 Black Editionと比べて0.1V低いことも特徴的な傾向として挙げられていた。ほか、空冷でも4GHz程度までオーバークロック可能だが、これはPhenom II X4 955 Black Editionと比べて特別高いものではないとのこと。液体窒素冷却や液体ヘリウム冷却など、オーバークロックのなかでもハイエンドに属する技術を用いなければ、TWKRの真の実力を計ることは難しいと見られる。

公開日の説明会を待たずしてリタイアしてしまったシステム。当初は会場での3DMarkベンチマークが計画されていた

こちらもリタイアしてしまったシステム。レコードを作ることがいかに難しいかが伺われる。「Phenomは冷やせば冷やすほどまわる」とのことだが、この季節、気温に加え湿度という課題もある