エネルギー効率に関する明確な基準が必要
個々の対応については、上述したポイントによりある程度の改善が可能だ。しかし、タバコリ氏は「まだ業界全体としての大きな問題が残されています。それは、ネットワーク機器ではエネルギー効率に関する明確な基準が未だに存在しないことです」と、業界への警鐘を鳴らす。
例えば、冷蔵庫をはじめとした電化製品にはエネルギー効率に関するデータがあるし、車なら燃費というバロメータが示されている。一方で、百万ドルもするルータにエネルギー効率を示す明確なデータがないのは大きな問題だ。こうした背景からジュニパーでは、厳密な評価ができユーザーにも分かりやすい共通基準を設ける必要性があると考え、ECR(エネルギー消費比率)に関する基準策定の取り組みに参加している。
ここで難しいのは、一口にエネルギー効率といっても負荷状況によって複数の評価指標が必要になる点だ。具体的には、最大負荷で使っている場合と、それ以外の状態での指標に分けられる。先程のECRは最大負荷でのエネルギー消費量の指標であり、最大スループットの状態でエネルギーの消費量を測定すれば算出が可能。しかし、企業やサービスプロバイダにおける通常の稼働率は2~4割程度であり、より現実的なアイドル(無負荷)時や可変負荷時の評価指標も求められるのである。
「アイドル時の効率指標があれば、深夜0時から朝8時にかけてのトラフィックが少ない時間帯に、キャパシティを抑えてパワーセーブモードに切り替えるといったオプションが有効に働きます。可変負荷時におけるエネルギー消費量の最適化は非常に理想的ですが、あらゆる瞬間においてトラフィック量とエネルギー消費量を比例関係にする必要があるため、技術的にかなり難易度の高いものといえるでしょう」(タバコリ氏)