検証結果
それでは、最初に動作温度の結果から報告したい。以下のグラフ1は、それぞれの環境でシステム起動後、30分程度何もせずに放置したアイドリング状態での測定温度である。リファレンスの方は67℃のところ、R4870-MD1Gは46℃となっており、実際に20℃程度の温度低下が確認できた。
続いてグラフ2は、3DMark VantageのGRAPHICS TEST 2(NEW CALICO)実行直後の測定温度だ。リファレンスが75℃、R4870-MD1Gは56℃で、高負荷状態であってもやはり20℃程度の温度低下となっている。
静音性については、先にも述べたように筆者の主観ではあるが、R4870-MD1Gの方が確かに"静か"であるように感じた。これについては、リファレンスもそれほど際立って騒音が大きいわけではなのだが、リファレンスだと、高負荷時にファン回転数の急上昇による「ブオーン」という大騒音が発生することがある。R4870-MD1Gでは、そういった突然の騒音が特には確認されなかったことも記しておきたい。
ついでにグラフ3は消費電力で、リファレンスとR4870-MD1Gそれぞれの、システムアイドリング時と、3DMark VantageのGRAPHICS TEST 2実行時のピーク消費電力を、「ワットチェッカー」を利用してシステム単位で測定したものだ。一応、どちらの状態でもR4870-MD1Gの消費電力がやや少ない。MSIが製品の特徴として謳う高性能コンデンサなど搭載コンポーネントの違いによる効果なのか、それとも単にGPUの個体差なのか、判断しづらい微妙な差ではあるが、結果は見ての通りである。
実際に動作温度の低下などが確認できたところで、3DMark Vantageスコアを見てみたい。スコアは「Performance」プリセットを用いたものだ。GPUのカタログスペックはリファレンスから変更無いので、結果は当然ではあるのだが、両カードに差異は認められない。純粋に冷却ユニットの性能が、GPU温度を下げる要因となっていることを改めて確認いただけるだろう。
価格差以上にメリットは大きい
MSI R4870-MD1Gの実力はわかったが、では、これにはどんなメリットがあるのだろうか。冷却能力が相当に高いということは、特に日本の夏場などで、高熱による性能・安定性の低下を防げるし、温度で劣化が早まるパーツ寿命を伸ばす効果も期待できるだろう。ヘビーユーザーであれば、オーバークロックでも、クロック上昇による消費電力(発熱)増加に対する冷却マージンが大きいほうが有利と、まぁメリットばかりである。当然メリットがある分、通常版との価格差として反映されるわけだが、せいぜいが数千円であるし、2万円クラスのGPUでその程度の差額をケチるというのは、ちょっともったいない。
最後に、念のため気に留めていただきたいポイントをひとつ。リファレンスのクーラーはブラケット部から排気する外排気タイプなのだが、一方のR4870-MD1Gは排気が結構な割合で内部に流れるタイプである。今回の検証では、検証台の上にシステムをむき出し状態で設置し実施しているため問題とならなかったが、実環境ではもちろんPCケース内に格納するのが一般的だ。PCケースの排気ファンをきちんと装備しておかないと、熱篭りなどにつながり、せっかっくの高性能クーラーも性能を存分に発揮できない可能性がある。冷却能力が高いとはいえ、例えばファンレスPCケースへ導入する場合などは、多少の気をつける必要があるだろう。