MIPS Technoliogiesは6月1日(米国時間)、MIPSアーキテクチャのAndroidプラットフォームのサポートを発表した。これは、2009年4月23日に米Embedded Alley Solutions(EAS)が発表した、AndroidをMIPSアーキテクチャに移植する計画に基づいたもので、これにより、MIPSアーキテクチャによる各種SoCを搭載したデバイス上で、Androidを利用できることとなり、これまで以上に広く組み込み分野で活用されることが期待されるようになった。
MIPSアーキテクチャのAndroid対応について、MIPSのVice President,MarketingのArt Swift氏および、同アーキテクチャを活用したプロセッサとして、最初のAndroid対応製品の提供を行う米RMI(旧:Raza Microelectronics)のVice President and Chief Strategy OfficerのRichard Miller氏の2人に話を聞いた。
コンシューマ分野で強みを持つMIPS
MIPSは多くのライセンスを世界中の半導体メーカーなどに供与しており、日本でも東芝やNECなどにライセンスされ、さまざまな製品に搭載されている。同社の調べによると、コンシューマ分野でのMIPSコアのシェアはデジタルテレビで60%、STBがケーブル向けで72%、IP-TV向けで75%であり、DVD機器でも72%、Blu-Ray機器では75%となっているという。このほか、PSPにもMIPSコアが用いられるなど、エンタテインメント分野でも一定の成果を出している。
Swift氏は語る。「コンシューマは、高い次元の体験(Experience)を求めている。それはHigh Definition(HD)やHigh Rateといった画質であったり、ワイヤレスで機器がつながるといったデジタルリビングであったりするが、どれもより高い性能を持つプロセッサが要求される。より高性能のプロセッサを搭載することにより、例えばコンテンツをダウンロードしてテレビで試聴し、さらにBlu-Rayに保存するといった体験("Connectivity Experience")のようなことができるようになる」。ちなみに、同氏は"Connectivity Experience"とは、リビングに多くの"Experience"が集まり、Connectivityが集約するもの、としていた。
こうした機器にはもちろん2Dも3Dも表示でき、さまざまな動画などのコーデックやデコードに対応できる高性能なSoCが求められる。しかし、その一方で低消費電力も要求される。そして、「機器メーカーは、"Time to Cost"の強い要求にさらされ続けている」のであり、そうした課題をクリアする必要があった。MIPSは先述もしたとおり、デジタルホーム分野では一定の位置につけており、場合によっては家の中のデジタル機器のすべてがMIPSコアで動いていた、といった話もあながち冗談ではない。
ただし、MIPSコア単体では高性能も低消費電力も実現はできるが、Time to Costの問題は解決できない。そこでAndroidの登場となる。Swift氏は「Androidはモバイル機器のためだけのものではない」と語る。また、「Androidの特長はオープンソースであるということであり、そのターゲットをモバイル機器としていることだが、そもそもオープンソースであるが故にモバイルに縛れるものではなく、さまざまなモノに応用が可能となる。これは大きなブレークスルーを生み出すことになる」とし、この流れは、「Sun MicrosystemsがJavaを立ち上げたときや、Transmetaが低消費電力CPUという概念を持ち込んだときのようなニューデバイスやニュービジネスの登場につながる」との見方を示し、「"New Experience"を提供することができるようになる」とする。
そのため、MIPSでは、オープンソースのコミュニティにも積極的に関与し、デジタルコンシューマの裾野を拡げていく考えである。その第一弾がOpen Embedded Software Foundation(OESF)への加入である。OESFは日本発の組織であり、その目的は組み込みでのAndroid活用にある。6月頭にはCOMPUTEX TAIPEI 2009に合わせ台湾にて台湾支部のお披露目の意味を込めたカンファレンスを開催。会場には入りきれないほどの人が押し寄せ、その数は400名とも800名とも推定されるほどであったという。MIPSもそこで講演をしたわけだが、「会場の雰囲気からは、皆が早くAndroidをモバイル以外で使いたがっていることを感じた」という。