ねりけし工場の秘密
70年代後半~90年代に子供時代を送った人たちの中には、「ねりけし」というと「集めた!」「練って遊んだ!」という人は多いのでは? 編集部では、様々な消しゴムを生産しているヒノデワシに伺い、ブーム当時から最近に至るまでのねりけしや、ねりけしを作る機械や材料を見せてもらった。
まずは工場を拝見。ねりけしは受注生産なため、常時製造はしていないそうで、残念ながら実際に材料を混ぜ合わせているところなどを見ることは出来なかったが、材料や機材を見せてもらうことができた。ちなみに、受注は100kg単位で受けているという。
工場でねりけしが作られる工程は、「材料の配合」「混練り」「押し出し」「切断」「仕上げ(箱詰めなど)」の5ステップ。ねりけしには様々な色や香りがあるが、「基本となる材料と製造工程は同じです」(ヒノデワシ 製品開発部 吉田晋作氏)。
配合する材料は、合成ゴム/サブ(ファクチス)/鉱物油/炭酸カルシウム/香料/顔料。合成ゴムは石油から作られている。ねりけしの素となるもので、最初の塊の状態はねりけしとは似ても似つかない弾力。人力のみで切断することはできないため、ギロチンのような形の装置を使って切断する。この合成ゴムにそのほかの材料を練りこむと、軟らかいねりけしができあがる。
サブというのは、ゴムに軟らかさを与える効果のあるもので、「ねりけしのフワフワした触り心地の秘密がサブです」(吉田氏)。また、鉱物油もゴムを軟らかくするためのものとのこと。炭酸カルシウムは、ねりけしを軟らかくするために使った油が表面に染み出してベトベトになるのを防ぐ役割を果たす。
香料は、もちろん香り付けのためのもの。ヒノデワシでは、コーラやメロンなど、約40種類の香りが用意されている。「原液は非常に匂いが強く、配合量は材料全体の0.5%程度という少ない量で、香り付けができます」(吉田氏)。また、顔料は様々な色のねりけしを生み出す素で、赤や青、蛍光色など、約10種類あるという。
以上の材料を、「混練り機(ニーダー)」と呼ばれる機械で練ると、ねりけしができあがる。「同工場の混練り機では、1回で70kgの材料を混ぜることができます。これはねりけしの個数でいうと7,000~8,000個分になります」(吉田氏)。
練り終わったばかりのねりけしは温かいため、1日以上室温で冷ます。「このとき、重ねて置いておくと、ねりけし同士がくっついてしまうので、くっつくのを防ぐために表面にでんぷんをふります」(吉田氏)。
1日以上置いたねりけしは、押し出し機で細長い板状に成型される。ねりけしを軟らかくして押し出しやすくするために、機械内部の温度は40~50℃、押し出し口付近は70℃程度になっている。押し出し機の出口部分は真四角ではなく、中央部分が凹んだ形状になっているが、押し出されると、丁度きれいな四角になる。
押し出したねりけしにも、ねりけし同士がくっつかないようにでんぷんをふっておく。そしてその後、切断用の機械で店頭に並んでいるねりけしのサイズに切断され、ケースに入れられ、内職先で箱詰めされて出荷される。「箱詰め作業時に、傷や汚れなどを検査し、不良品は取り除きます」(吉田氏)。