住友電気工業/住友電装/東海ゴム工業のブースでは、超伝導のデモ「Sifo(Superconducting Inductive floating Object)デモ」が行われていた。今さら超伝導かとも思われる方も居るかもしれないが、目の前で超伝導磁石のデモが見られるのは結構興味深い。
超伝導は周知のとおり、電気抵抗が限りなく0になるため、ロスが少なくエコロジーであるというのが、住友電工の考え。ちなみに、日本の発電所から家庭まで送電する際、抵抗により5%の電力ロスが生じるというが、この量は日本の原子力発電所5基分に相当するという。
同社の用いる超伝導体材料はビスマス系超伝導材料で、すでに長尺線材化され、ビスマス系超伝導線「Di-BSCCD」として市販されている。組成式はBi2Sr2Ca2Cu3Oxとなる。臨界温度は110K(-160℃)付近と高く、液体窒素(-196℃)で冷やすだけで超伝導状態に達する。
超伝導はMRIや半導体材料のSiの引上炉などに用いられているほか、山梨県で実験が行われているリニアモーターカーにも採用。将来的には核融合炉での使用も想定されている。
今回のデモでは、Di-BSCCDを巻いて作製した2つのコイルを上下に重ね、下の駆動コイルに単3電池6本から通電。スイッチを入れると電磁誘導によりコイルが磁石化、抵抗が0のため、浮上コイル側との間に電流が流れ続け、結果として反発してコイルが浮き上がることを示した。実験デモでは5kg分のペットボトルの重さに余裕で耐えていたほか、観客の1人が力を込めて押しても、浮上したままであった。
住友電工では、実際に超伝導モーターを開発、2008年の洞爺湖サミットに自動車用モーターとして出展したほか、実際に走行実験を実施。最高速度85km/hを達成したほか、30km/hの走行で2時間走り続けたという。駆動ロスなどがなくなるため、「大型車の方がメリットが出やすい」としているが、実用化については、どうやって冷やすかや安全性の問題などがあるため、10年程度の将来になるとしている。