燃えない2次電池

一方の東芝のブースでは、同社のリチウムイオン電池「SCiB(Super Charge ion Battery)」を参考出展。HEV向けのSCiBも2008年に開発されたことがアナウンスされているが、今回は欧州向け電動アシスト自転車に搭載されているSCiBを展示したため参考出展の扱いとなっている。

左のSCiBセルが右のバッテリパックには直列で10個配置されている

同バッテリの最大の特徴は、負極材料にチタン酸リチウム(LTO)を採用したこと。基本的な充放電の原理はリチウムイオン電池と同様だが、LTOを用いることで安全性が格段に向上している。一般的な負極材料であるグラファイトを用いたリチウムイオン電池は、電池内部で短絡が発生すると、負極から正極に一気にイオンが流れ、温度が急上昇、その熱などの影響によりLiに引火、破裂ということとなる。しかし、LTOを用いた場合、短絡した瞬間にLTOが化学変化を起こし絶縁体へと変わるため、イオンが流れにくくなり熱の集約が起こらなくなるため、電解液であるリチウムの発火が抑えられることとなるという。「釘を刺しても強制的に短絡させたりしても、破裂、発火、発煙という問題が生じない」(説明員)とのこと。

SCiBの構造(出所:東芝レビュー Vol.63 No.2(2008))

また、長寿命であることも特長。約6,000回の充放電で、容量劣化は当初の80%程度にとどめることが可能で、1日1回の充電の場合、15年は使用できる計算となり、これは自動車の寿命に十分対応できることを示すもの、とする。加えて、急速充電も可能。充電時のCレートが12C時で、5分間で90%以上まで充電することが可能だという。

このほか、電気二重層キャパシタ並みの出力性能を持っており、電圧の降下がしにくいため、最後まで電力を使い切ることが可能。

同社ではHEV用バッテリーのほか、プラグインハイブリッド自動車(P-HEV)および電気自動車(EV)用バッテリの開発を進めており、HEV用は高出力の実現を、P-HEV/EV向けには高容量の実現をそれぞれ目標に掲げ実用化に向けた取り組みを進めていくとする。

このほか、同社ブースでは、車載用パワーMOSFETの紹介や、SiCを用いたパワーデバイスの展示なども行われている。特にSiCのパワーデバイスは、2インチウェハに試作したSBD(ショットキバリアダイオード)やJFET、TO-220パッケージに実装された12Aクラス試作SBDチップの展示のほか、SiC-JBS+Si-IGBTハイブリッドペアを用いた4kVA級三相インバータのデモ展示がされており、いずれのチップもダイの状態で動作しているところが展示されている。

SiCを用いた各種試作デバイス

次世代の車載半導体としても期待されるSiCだが、現在市販されているウェハは4インチ止まり。米Creeが6インチ(150mm)ウェハを商品化するとしており、それが登場すれば実用化に一歩近づくこととなる。ただし、欠陥密度による歩留まりの問題や、量産に向けたプロセス開発などの問題が残されており、まだ実用化には時間がかかりそうだという。

SiCハイブリッドぺアインバータによる自動車応用システムのデモ(右がインバータ回路)