5月20日から22日までの3日間、パシフィコ横浜において「人とくるまのテクノロジー展 2009」が開催されている。発表されたばかりの新型自動車の展示や画像認識技術を応用した運転支援システムの展示風景などをすでに西尾氏が記事として掲載しているが、今回はカーエレクトロニクスという視点で見かけた展示物の紹介をしたい。
注目の的はリチウムイオン電池
会場内に人だかりができていたブースをカーエレクトロニクスの視点で見ると、そこは日立グループのブースと東芝のブース。
何が注目を集めているかというと、ハイブリッド自動車(HEV)用の2次電池。現在の一般的な乗用車クラスに使用されている2次電池はニッケル水素電池だが、両社のブースに展示されているのはリチウムイオン電池。
日立のブースでは、先日発表したばかりの第4世代リチウムイオン電池のセルを展示していた。性能は出力密度が4,500W/kgで、2009年秋からのサンプル出荷が計画されている。第3世代品の出力密度が3,000W/kgであったことを考えると、前世代比で1.5倍の出力密度の向上を果たしたこととなる。
これを実現した技術について展示スタッフに詳細を聞いてみたが、詳しくは明かしてくれなかった。ただ、Mn系の正極材料については、粒子形状の最適化のほか、配合物も変更を施した可能性を示唆していた。また、セルの形状を従来の円筒形から角型に変更を施したことも有効に働いているとする。
リチウムイオン電池で気になるのが安全性。PCのバッテリなどが発火した事件などが記憶に新しいが、「材料ベースから安全なものを利用しているほか、日立独自の安全基準を構築し、遵守するようにしている」(説明員)とのこと。
量産は第3世代が2010年から月産30万セル程度で開始される計画だが、第4世代がサンプル出荷を2009年に開始するのであれば第4世代品の量産を早めれば良いと思うが、そこは「詳細な品質評価の問題が残っているほか、カスタマ側の採用計画の都合もある」(説明員)とのことで、自動車側の世代交代の時期に合わせた切り替わりを行っていくとした。
なお、同社では車載用のリチウムイオン電池に関する各種データの蓄積は世界でトップクラスとしており、安全かつ高性能なリチウムイオン電池として積極的に展開していく計画としている。
このほか、同ブースでは日立のグループ会社である日立電線がパワー半導体パッケージ用銅部材などの展示を行っている。パワー半導体向けには「大電流基板用無酸素銅板」が用いられるが、これは純銅なのでCu-SnやCu-Zrのような合金銅に比べ導電率、放熱性が高いという特徴を有している。