――肝心のぺンのデザインに関して訊かせていただきたいのですが。

保坂「長さ、太さ、サイドスイッチなどあらゆる部分においてユーザーにリサーチして、デザインが決まりました。ペンスタンドの中の替え芯も様々なものを用意しました。ペンスタンド自体ももかなり工夫しています。とにかく、卓上での使い易さやデザインに配慮しました。また、細かい部分ですが、ひとつの職場で複数の人がペンタブレットを使用している場合、自分のペンがわからなくなるという話がありました。ペンの設定は個人ごとに違うので、このような混同を防ぐため、ペンにリングを付属させ交換をする事で自分のペンの認識が容易になりました」

ペン本体、ペン先(芯)、ペンスタンドなどあらゆるパーツが描くために洗練された

――日本国内ではオプション販売となっているマウスに関してはどうでしょうか?

神崎「より小ぶりにして欲しいという要望に応えました。これまでの製品では、タブレット用マウスは使いにくいと不評でした。使いにくい理由は、通常のマウスではマウスが画面や操作する人に対してどの様な向きであっても、マウスから見てマウスを横に動かせば画面上のカーソルは横に動きます。しかし今までのタブレット用マウスは、マウスから見て横に動かすのではなく、タブレットの操作面に対して横に動かさなければ、カーソルは横には動きません。普通、タブレットは画面に対して正対するように置かれますが、マウスは操作者の右手側で使われるため、必ずしもマウスが画面に対して正対するように使われるとは限りません。その為、普通のマウスに慣れた人がタブレット用マウスを使うと、マウスを真横に動かしたつもりなのに画面のカーソルは斜めに動く、といったことが起きていました。そのため、4ではマウスがタブレットに対してどういう向きかを読み取れるように改良しました。これにより、タブレットの操作面に対して斜めにマウスを動かしても、マウスから見て真横に動いていればカーソルは横に動くように設定することが出来るようになりました」

日本国内ではオプションであるマウスの挙動にようデータ読み取りも、描くスタイルを配慮した設計に改良された

――様々な進化を遂げたIntuos4ですが、初めてのユーザーや3の既存ユーザーの方々に、Intuos4のどんな部分をアピールしたいですか?

金田「これまでは、『電子ペン』という感じがあったと思うのですが、今回はほとんど普通の紙とペンのような使用感があると思います。センシティブなペン、タブレットの表面シートのザラつき感も調整しているので、まるで紙とペンのような心地よい抵抗もあります。描き心地はとにかく、これまでの製品と比較にならないくらい良いものに仕上がっていると思います」

保坂「ペンの使い易さですね。軽いタッチで描けることはもちろんのこと、ユーザーごとに違う、心地よい使用感実現のため、4種類の替え芯があります。スタンダードな芯。フェルトペンのような芯、内側にスプリングを組み込んだストローク芯という、ひっかかりのない芯、ゴムのようなしなりがあるような感触の芯、この4種類になります」

金田「材質、電気的、デザイン、様々なアプローチから、より描き心地良い製品を提供させていただけたと思います」

神崎「ワークフローの効率化のため、ショートカットキーをより使い易くしました。ラジアルメニューを実装したことにより、どんなキー設定かが、有機ELディスプレイにて一覧で表示されます。ラジアルメニューでコマンドを増やすと、1階層につき8個、4階層まで増やしていけるので、タブレットのボタンではコマンドが足りなくなっても増やしていけますので、ユーザーごとに好みに応じてより快適に使って欲しいですね。またファンクションキーのプレシジョンモードはパソコン画面に対して、画面サイズを変えなくても、タブレットの動きの尺度を変えられます。手首ではなく、腕を大きく使って絵を描くという絵画の描き方に慣れている人には、便利なモードだと思います」

一目でわかるデザインの進化や、ツールを使えば実感できる性能の大幅な進歩。Intuos4のこれらの要素を支える目に見えない部分における尽力を、ワコムの開発陣は語ってくれた。「描き易くなった」というクリエイターたちのひと言を得るためだけに、1枚のタブレットと1本のペンの中には膨大なエネルギーが注がれている。

インタビュー撮影:岩松喜平