カシオ欧州 総務・法務部長のLutz C. Heydash氏

案内役を務めてくださったのはカシオ欧州 総務・法務部長のLutz C. Heydash氏。新社屋移転にあたり、省エネ設備導入のため尽力した人物だ。

ここカシオ欧州では、地下約130mに10本の地熱採取装置を設置。年間を通じて16度に保たれるという地熱を、社屋の天井と床のコンクリートに埋め込まれたパイプに水を流す冷暖房システムに利用している。具体的には、地熱により、流れる水を外気が地温よりも高い夏は冷やし冷房に、外気が地温より低い冬は暖め暖房に活用しているのだ。これにより、冷却機やヒートポンプのエネルギー消費を抑え、同規模の一般の建物と比較すると、約40%の省エネを実現。CO2の排出量を年間約1,000トン減らせるという。特に、冬場の平均気温3℃というハンブルクにおいて暖房時の省エネ効果は相当高いはずだ。

カシオ欧州が採用する地熱システム。再生可能エネルギーを用いることで、CO2削減に貢献する

もうひとつの省エネポイントは空調システム。「夏は冷やされ、冬は暖められた天井や床付近の空気を循環させることで、室内を一定の温度に保つことができるのです」(同氏)という。

屋上空調システム室

水循環冷水システム

新社屋の総工費は52ミリオンユーロ。地熱を利用するため、掘削機で地下を掘り出す作業があり、通常よりも初期投資が大きくなるが、「地球環境に配慮したオフィスづくり、そして長期的に見るとエネルギーコストを節約できるという利点があります」と同氏。長い目で見れば、"地球に優しい"オフィスが、会社にとっても優しいオフィスというわけだ。

緑が映えるオフィスに

もちろん、新社屋に採用された"エコ"要素は地熱システムだけではない。写真を見てのとおり、ガラス面で覆われた室内は採光に優れ、晴れていれば日中に照明を必要とすることはない。窓に取り付けられた電動のブラインドも太陽の動きや天候に合わせて作動。効率よく光を採り入れたり、遮断することで、省エネ効果があるという。また、廊下や化粧室の照明は人感センサーで人の動きをキャッチし、人がいない場合は自動でオフにする。

ガラス窓で囲まれたミーティングルーム。ガラスを2重にし、低騒音性にも配慮。近距離を日中は4~5分おきに飛行する航空機の音もほぼ聞こえない

屋上部分では緑化が進む。さらにオフィス棟エントランス前には芝が植えられており、じきに青々とした緑に包まれたオフィスができあがる予定だ。ドイツでは州ごとの行政で差異はあるものの、新築物件が満たさなければならない必須項目のひとつとして「充分な緑があるか」が挙げられるという。そんなポイントもこのオフィスではクリアしているのだ。……続きを読む

屋上。現時点では茶褐色となっている箇所には植物が植えられており、夏には緑地が広がる予定だという