HSPAの拡大については、同規格は現在、110カ国以上240以上のネットワークで提供されており、そのうちの半分以上は下り最大3.6Mbps以上を実現していると説明。「HSPAはモバイルブロードバンドのデファクト標準になった」(Sparr氏)と語る。Sparr氏によると、Ericssonでは、2009年~2010年にモバイルブロードバンドが固定ブロードバンドの利用者数を上回ると予想しているという。

カバレッジと接続でWiFiに対抗

すでに多くの端末が対応するWi-FiとHSPA通信の関係は今後どうなるのだろうか? Norin氏は「競合というより補完」と説明する。「Wi-Fiのアクセスポイントに比べると、HSPAの接続性はカバーエリアも広く安定している。電話に例えると、Wi-Fiアクセスポイントは公衆電話、HSPAモジュールは携帯電話。Wi-Fiアクセスポイントは自分で使える場所を探さなくてはならないが、携帯電話は探す必要がない」とアピールする。

MID、消費者家電に拡大

HSPAモジュール(奥)と小型化されたMID用のモジュール(手前)

今後の取り組みについては、ノートPC、ネットブックときて、次の焦点は「MID(モバイルインターネット端末)」とNorin氏。EricssonはこのMID市場向けに、28.5×33.5×2.2mmと小型でマザーボードに統合可能なHSPA / WCDMA / EDGEモジュールを開発している。

ここでは2008年10月にIntelとIntelの次世代Atomプロセッサ「Moorestown」に関する提携を発表している。これはEricssonのモジュールをIntelのMoorestownを組み合わせたもので、バッテリ寿命と小型化を特徴だという。このプラットフォームは2009年末~2010年初めに提供する予定だという。

MIDの開発については、すでにメーカーも動いている。MWC初日の2月16日、LGがIntelとMID分野で協力を発表し、EricssonとIntelのプラットフォームを搭載したMIDを開発する計画を明らかにした。Ericssonにとっては、自社モジュールを搭載する初のMIDとなる。

Norin氏はこの市場について、「MIDセグメントはハイボリュームビジネスで、HSPAやオペレータにとっては重要」と語る。Intelとの提携は独占的なものではないというが、「チップセット業界最大手のIntelと通信業界最大手のEricssonが組むことは大きな意味を持つ」とNorin氏は続ける。今後は日本や台湾などのOEMメーカーと、MIDへのモジュール搭載の話を進めていくという。

またNorin氏は、もう1つの方向性として、メディアプレイヤーやゲーム機といったセグメントを挙げる。将来的には、ゲーム端末、GPS端末、ブックリーダー、カメラなどにもEricssonのモジュールを搭載したいと意欲を示す。

「Mobile Broadband」ロゴで認知改善を図る

モバイルブロードバンド時代に向けて、モバイル最大の業界団体GSM Association(MWCの主催者でもある)は、2008年9月に「Mobile Broadband」イニシアティブを立ち上げた。Ericssonもこれに積極的に参加している。

「モバイルブロードバンドがビジネスからコンシューマ分野に拡大しつつあるが、認知度が障害になっている」とSparr氏は言う。同団体は、モバイルブロードバンドの認知の向上に取り組むもので、まず、消費者にモバイルブロードバンド対応端末に「Mobile Broadband」ロゴをつけることで、認知改善と普及を図る狙いだ。