スウェーデンを代表するICT企業のEricssonは、モバイルブロードバンド時代に向け、HSPA埋め込みモジュールを自社で提供している。同社が埋め込みモジュール分野について詳細な計画を発表したのは、2007年の「Mobile World Congress(MWC)」でのこと。2月に開催された2009年のMWCで、Ericssonでこの分野を担当するモバイルブロードバンドモジュール担当副社長のMats Norin氏、同マーケティングディレクターのEva Sparr氏に、2年が経過した埋め込みモジュール事業における成果と今後の戦略について聞いた。
メーカー4社と提携、HSPAモジュールを価格は半減
Sparr氏はまず、「2008年は商用スタートの年」と振り返り、2008年の成果を紹介した。Ericssonでは、2年半前にHSPAのカバレッジ側での発展に比べ、端末が限定されているという問題を認識したという。そこで携帯電話だけではなく、ノートPCなどの端末に組み込むためのコストを下げるべく、自社技術と資産を活用する戦略を立てた。その戦略は、ソニーとの合弁子会社、Sony Ericssonが利用しているものと同じチップセットを利用してモジュールを作成し、直接OEMメーカーに提供するという新しいビジネスモデルだ。このビジネスモデルを導入したことで、「HSPAモジュールの価格は50%下がった」とSparr氏は説明する。
現在、同社のHSPAモジュールを採用するPCメーカーは、東芝、米Dell、中国Lenovo、韓国LGの4社。2008年に最初のHSPAモジュール搭載機が登場し、現在は約50機種に広がっているという。同モジュールは80社以上のオペレータに認定されており、すでに実証済みの技術を取り込んだことで、市場投入までの時間を短縮できるという。Ericssonでは、「2011年までに50%のノートPCにHSPAモジュールが搭載されると予想している」とSparr氏は語る。
このほかSparr氏はモジュール事業の成果として、2008年末に米IntelとノートPCの盗難防止技術の提携についても挙げた。この盗難防止技術は、ノートPCの紛失や盗難の際、EricssonモジュールにSMSを送ることでコンピュータを完全にロックできるというものだ。
追い風となるネットブックブーム
次にSparr氏は2008年のトレンドであるネットブック人気とHSPAの拡大について次のような見解を示した。
ネットブックについては、「モバイルブロードバンドのアタッチ(モジュール搭載)レートが高く、すぐにモバイルブロードバンドを利用できる。持ち運びしやすい上、価格も魅力的なので、世界的に急速に普及している」と評価。なお、このネットブック人気を受けて、英Vodafone、米AT&T、ノルウェイTelenorといったオペレータは、HSPA料金プランとネットブックをセットにして安価で提供している。