三部構成だったScott Guthrie氏の基調講演の「Web」を最初のレポートで取り上げた。残る2つは「メディア」と「RIA」、つまりSilverlightである。講演では、Smooth StreamingやBlend 3の新機能Sketch Flow、Out of BrowserによるSilverlightアプリのスタンドアロン動作のデモが披露された。

18カ月前にリリースされたSilverlightは、6カ月前にバージョン2となり、早くもMicrosoftはバージョン3について語り始めた。この間にSilverlightをインストール数が世界で3億5,000万件に達した。Flashが十分に浸透していた状況を考えると大健闘と言えるだろう。

Silverlightリリースは2007年9月、2008年10月のSilverlight 2リリースを経て現在に至る

Silverlight開発者は30万人以上。バージョン3のタイムフレームからVisual StudioとExpressionを超えたグループに広げる

DTP時代からのデザイナーの支持を背景にしたAdobe Systemsのユーザー基盤に対して、Microsoftはデザイナーと開発者の垣根を取り払うプラットフォームを武器に対抗してきた。Visual Studioという開発者に浸透しているソフトウエア開発環境を土台に、デザインツールExpressionを用意、UI記述言語XAMLを通じてデザイナーと開発者の作業をうまく結びつけた。サービス提供者の戦略、そしてデザイナーが考えたデザインが形を変えることなく、きちんとサイトに反映される。その結果、Visual StudioとExpressionの組み合わせを採用した開発者やデザイナーが300,000人を突破。またNBC、CBS、AOL、Career Builder、Intuit、Yahoo! Japan、10 Cent QQなど、Silverlightパートナーが世界30カ国で200以上に広がっている。

講演ではパートナーの代表として、米国でサブスクリプション形式のDVDレンタル/ 映画配信サービスを提供するNetflixが登場した。Silverlightを採用するまでの同社のストリーミング・サービスは対応ブラウザがInternet Explorer(IE)に限られたため、MacユーザーやFirefoxユーザーなど契約メンバーの20%がストリーミングを利用できなかった。同社にとって、もう1つ頭痛の種になったのがプログラムのインストールだ。IEユーザーでも12%が複雑なインストール画面で尻込みし、さらに8%が失敗したという。これらの問題がSilverlight採用で解決した。

NetflixのWebエンジニアリング担当副社長Kevin McEntee氏

以前のサービスは複雑なインストールプロセスが敬遠された

以前はプログラムをアップデートする度に、ユーザーの再インストールが必要だったが、Silverlightではサーバ上のファイルを更新するだけで自動的にユーザーが受け取るサービスに反映される。そのため現在では2週ごとのペースで新機能の追加、バグの修正やパフォーマンスの改善などのアップデートを行っているという。ほかにもDRM機能や、ユーザーの環境に最適化される映像配信などをメリットに挙げた。

米国では北京オリンピックでSilverlightが浸透

メディアとしてSilverlight 3は、GPUハードウエア・アクセラレーションに対応し、H.264/ AAC/ MPEG-4などのコーデックを新たにサポートする。Raw bit stream APIが提供されるので、開発者による対応コーデックのカスタマイズも可能だ。

講演では「IIS Media Services」が取り上げられた。ユーザーの接続環境やハードウエア環境を認識し、配信品質を動的に変化するアダプティブ・ストリーミング(Smooth Streaming)を実現する。またMIX09では、録画済みコンテンツだけではなく、スポーツイベントのようなライブキャプチャ・コンテンツでもSmooth Streamingを使った配信を可能にする「Live Smooth Streaming」のベータ提供を開始した。

Guthrie氏は、Expression Encoder 2を使ってBig Buck Bunnyのビデオをインポートし、出力設定でIIS Webサーバを指定してSmooth Streaming形式でエンコード

実際に再生すると、接続環境が良かったため2.4mbpsまで再生品質が上がった。アダプティブ・ストリーミングはTCOの削減につながる

2番目のパートナーゲストとして、米国で北京オリンピック中継のオンライン版を担当したNBCのデジタルメディア担当SVPのPerkins Miller氏が登場した。同サービスは期間中に5,000万以上にユニークビジターを集め、ページビューは13億を超えた。ヘビーユーザーの多くは、ピクチャーインピクチャーや最大4つの同時フィードなどを積極的に活用していたそうだ。「優れた視聴体験をわれわれが用意すれば、視聴者により多くのビデオをオンデマンドで視ていただけるのが分かった」と同氏。NBCはMicrosoftとの契約を更新し、2010年のバンクーバー冬季オリンピックでもSilverlightを採用したオンラインサービスを提供する。

NBCのデジタルメディア担当SVPのPerkins Miller氏

2010年の冬期オリンピックでは「オンラインHDオリンピックを実現する」というNBC。100% Smooth Streamingによって、ライブストリーミングでHDDレコーダーのような一時停止/巻き戻しを可能にする